研究実績の概要 |
本研究は、マグマだまりが下部から高温マグマの貫入により再加熱される時の、結晶に富んだ上盤の挙動を数値実験によって明らかにしようとするものである。加熱により流動化しマッシュ状になった上盤は、高粘性流体として下部との密度差から連続体的にレイリーテイラー不安定性を引き起こす。一方で、高密度な結晶は剥離し、集積することで極めて非線形なレオロジー挙動を示すことになる。これらを定量的に調査するため、高粘性流体と粒子の混相流シミュレーションを実施した(Furuichi and Nishiura, G-Cubed, 2014)。現実的な物性や、結晶の集団運動を取り扱うためには粒子シミュレーションの大規模化が必要であったため、本研究においても技術開発に取り組み、動的負荷分散手法開発において成果発表を行った(Furuichi and Nishiura, Compt. Phys. Comm, 2017)。 3次元シミュレーションを実施した結果、マッシュ内の結晶体積分率が、上層崩落をコントロールすることが分かった。そして既往研究において噴火現象との相関が示唆されている上盤の一挙崩壊には、臨界充填密度付近の結晶に富んだ堆積層の形成が重要だと分かった。そのような堆積層形成の作業仮説として、下部から貫入する密度の高いマフィックなメルトと上部の低密度なメルトとの境界に、上層から沈降する結晶が集積する可能性を指摘した。数値計算を実施した結果、上下メルトの密度差を大きくすると、2重拡散対流により熱対流の成長、つまり物質混合が妨げられ、沈降する粒子がメルトの境界で層状にトラップされた。本現象を再現した密度差は既往研究で想定されるマフィックなメルトの密度において達成可能であることから、自然現象としてもあり得る。このような検証を3次元シミュレーションで検証した例はなく、新しい成果である。
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