研究実績の概要 |
本研究課題の主要な目的である、震源の移動現象に基づき地殻内の流体分布を明らかにすることを実施するため、本年度は地殻流体との関係が指摘される震源移動を有する地震活動を客観的かつ自動的に検出できるための手法の開発を行った。この手法は、「地震活動のクラスタリング」、「移動現象の同定及び移動速度の推定」、「移動現象の有意性の評価」というフローから構成され、地震カタログから震源移動現象を示す地震活動の抽出を行うものである。 開発した手法を、2015年箱根火山の群発地震活動の震源カタログに適用し、その中からいくつかの震源移動現象を検出することができ、手法の有用性が示された。得られた震源の移動様式は放物線近似でき、またその拡散係数Dは1~20m2/secとなった。これらの結果は、過去に箱根地域で観測された結果(Yukutake et al., 2011)と調和的であり、群発地震発生と地殻流体拡散との関係を示唆するものである。また、カタログに記載されていない地震を再検出するため、基準となる雛形地震を用い連続波形記録と波形相関をとるマッチドフィルター法(例えば、Peng and Zhao, 2009)の整備を行った。 また、本年度は箱根火山周辺部に設置された稠密な地震観測網のデータから、3次元地震波速度トモグラフィー解析を行い、火山内部の高分解能な速度構造モデルを得た。その結果、群発地震発生域において深部のマグマ起源の地殻流体が存在することを明らかにし、震源の移動現象と地殻流体との関係がより明確となった。
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