研究課題
本研究課題では、亜熱帯海洋の長期変化と変動、そして上空大気場へのその影響解明を目的とした。これを実現するために亜熱帯海洋に分布する巨大な水塊である亜熱帯モード水を主たる研究対象とした。(1)全球亜熱帯モード水の顕著な水温上昇:前年度までにデータ収集および品質管理作業を終えた。本年度は、観測データおよび歴史実験再現データを併用して解析を行った結果、全球の亜熱帯モード水は過去100年あたり1度を超える速いペースで昇温していることを発見した。そして、この昇温は亜熱帯モード水形成域での水温上昇を反映した結果であることを見出した(Sugimoto et al. 2017)。本成果は、海洋が吸収した熱の移流・蓄積過程解明に資するものである。(2)北太平洋亜熱帯モード水水温の10年規模変動機構の確立:(1)で作成した時系列にwavelet解析を行った結果、北太平洋亜熱帯モード水水温は10年周期が卓越することを発見した。そして、水温変動の要因は1990年頃を境に変わっていることを見出した。すなわち、1990年までは冬季北西季節風に伴う冷却効果が要因であり、1990年以降では黒潮続流流路形態変化に起因した海洋成層変化に伴う下層水取り込み過程変化が主因であることを発見した(Sugimoto and Kako 2016)。(3)北太平洋亜熱帯モード水の大気場への影響評価: 亜熱帯モード水を取り込む暖水渦に着目し、「暖水渦がある海」と「ない海」で大気モデルを駆動し、アンサンブル実験を実施した。その結果、暖水渦は、顕熱加熱により大気境界層内を暖めることがわかった。さらに、この加熱に起因した運動量鉛直混合機構により海上風収束場が形成され、これに伴う上昇流が降水をもたらし、その結果生じた潜熱加熱が境界層上の大気を暖めることが示された(Sugimoto et al. 2017)。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://www.pol.gp.tohoku.ac.jp/~sugimoto/main/kaken/2016-2018_wakate/index.html