研究課題/領域番号 |
15K17757
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 知己 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (80584979)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マッデン・ジュリアン振動 / ウェーブレット解析 |
研究実績の概要 |
本研究において解析対象としている全球雲システム解像モデルNICAMによるマッデン・ジュリアン振動(MJO)のシミュレーション結果のうち、2011年に行われた国際的なMJO集中観測プロジェクトCINDY2011/DYNAMOで捉えられた事例を再現したものについて、combined-Fourier-wavelet-transform法を適用することにより、MJOの対流活発域内においてどのような赤道波が卓越していたかを調べた。解析の結果、水平14 kmシミュレーションにおいては観測に比べて赤道ケルビン波のシグナルが過少となっていることが明らかになった。一方で、MJOの対流活発域自体の東西スケールや東進のタイミングは観測と水平14 km解像度のシミュレーションでとてもよく一致している。MJOの東進の性質は、その内包する赤道波の性質に大きく依存するとする説と、MJOと同等の水平スケールにおける熱や水蒸気の収支が主たる決定要因であり、内部の細かい構造には大きく依存しないとする説があるが、上述の結果は後者をサポートするものとなっている。さらに水平解像度の異なるシミュレーション(3.5 km, 7 km)との比較を行ったところ、いずれの解像度においても赤道ケルビン波は同程度に過少となっていたが、3.5 km実験においてはMJOの東進が観測とよく一致していたで一方で、7 km実験においては東進が不明瞭であった。7 km実験においては対流活発域西部において海洋からの潜熱供給が過大となっており、大きな水平スケールにおける熱・水蒸気の収支が現実と異なったことによって東進が阻害された可能性がある。この結果もまた、MJOの東進は対流活発域の内包する赤道波よりも、大規模の熱・水蒸気収支に大きく依存するとする説をサポートするものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに、解析対象としている実験データにCombined-Fourier-wavelet-transform法を適用してMJO対流活発域内の赤道波成分の解析を実施した。またこれにより、時間方向に限られた実験データに対して従来以上に詳細な考察をすることが可能になり、解析結果を元にMJOの東進について存在している相反する議論の一方をサポートすることができた。作業が予定通りに進むとともに、解析結果がMJOを理解する上で有益であることを示すことができていることから、本研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているため、基本的に当初予定通りに沿って研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウェーブレット解析の導入にあたって考案者の菊池氏(ハワイ大学)と直接打ち合わせが必要であると考えていたが、導入段階ではメールなどの通信手段を用いて、解析が進んだ段階で直接議論を行う方が研究成果をあげる上で効果的であると考え直したため。
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次年度使用額の使用計画 |
菊池氏との打ち合わせのための旅費として使用することを想定している。
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