研究実績の概要 |
本研究において解析対象としている全球雲システム解像モデルNICAMによるマッデン・ジュリアン振動(MJO)のシミュレーション結果のうち、2011年に行われた国際的なMJO集中観測プロジェクトCINDY2011/DYNAMOで捉えられた事例を再現したものについて、水平解像度14km, 7km, 3.5 kmの3種類の設定での実験結果にcombined-Fourier-wavelet-transform法を適用にすることにより得られた知見について共著者の菊池氏(上記解析手法の考案者)とともに論文にまとめた (Miyakawa and Kikuchi 2018)。さらに、解像度に伴って対流によって生成される雲水と氷の割合が変化し、MJOの循環強度に影響を与えていることを指摘し(Miyakawa and Miura 2019)、また積雲パラメタリゼーションの導入によって大規模場の循環が調整できることを示した(Miyakawa et al. 2018)。さらに、MJOの本質的な構造を明確に抽出しやすくすることを目的として実施した水惑星条件のもとで熱帯に東西波数1の海面温度(SST)偏差を与えたMJO実験のデータ解析により、MJOのオンセットに混合ロスビー重力波が果たす役割などを指摘した(Takasuka et al. 2018)。また、NICAMに力学的な3次元の海洋を結合させた場合のMJOへの影響についても評価を行った(Miyakawa et al. 2017)。本研究により、MJOに内包される様々なスケールの対流・熱帯波動などの構成要素および、大規模循環場の状況や海洋との結合などがどのようにMJOやそのオンセットに影響するかについて大きく理解が進み、目的通りMJOのメカニズム解明に資する知見が多く得られた。
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