研究実績の概要 |
今年度も、昨年度から引き続き全球気候モデルで採用されている放射伝達モデルの改良、特に気体吸収過程の改良を中心に研究を進めた。 吸収過程における連続吸収体の吸収プログラムの更新が一昨年から昨年度にかけて行われたため、これらの確認を行った。また、波長、気圧(高度)、温度における気体吸収の変化に対する内挿法および解像度の検討を行った。これらを確認の上、気圧27点(1100-0.01hPa、対数線型)、気温10点(150-330K、20Kごと)、吸収係数のデータベースを作成した。この波長解像度は波長領域ごとに異なり、短波領域でも細かい解像度を保ったままにしているところが従来と異なるところであり、精度の向上が見込まれる。 また、今年度は放射伝達モデル本体の見直しにも着手した。まずは放射スキームの高速化について検討を行った。吸収係数の内挿に使用するサブルーチンPTFIT2について、一層ずつ探す方法からコーディングで整数に変換する方法を試みたところ、PTFIT2が35%高速化した。この高速化の検討に伴い、放射コードの全般的な見直しも行った。 さらに、3次元放射の影響を簡易的に取り入れるための比較研究を始めた。これまで、1次元放射伝達コードを利用した近似法のIndependent Pixel Approximation (IPA/ICA , Stephens et al., 1991; Cahalan et al., 1994)やTilted Independent Pixel Approximation (TIPA, Varnai and Davies,1999) が開発されている。これらの近似法で算定する放射量に対して、3次元放射伝達コードによって見積られた放射量の違いを定量的に評価した。IPAでは精度が不十分であるが、TIPAは3次元効果を良く再現していることがわかった。
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