研究課題
平均子午面循環の観点から熱帯対流圏界層(TTL)は成層圏の最上流部であるため、TTLにおける大気質の変動は、成層圏全体の環境に影響を与える。本研究では、中高緯度最下部成層圏(ExUTLS)からTTLへの大気輸送に注目し、TTLにおけるExUTLS大気混合比率の季節変動および経年変動を後方流跡線解析により推定した。本年度においては、先行研究による推定値と比較するために本研究による推定値の誤差評価に注力した。その結果、誤差の範囲内で先行研究と整合する結果が得られていることが明らかになった。さらに推定された混合比率の結果の妥当性を検証するために、混合比率の時系列を基にTTL上部における水蒸気混合比の時間変動を構築したところ、衛星観測データや既存の観測的研究による報告とよく一致する値が得られた。このような検証を経たTTLにおけるExUTLS大気混合比率を用いて、本研究の主目的たる、その混合比率の変動が「成層圏大気の年齢」の長期変動に与えている影響を評価するために、成層圏内の子午面輸送に要する時間の推定を後方流跡線による追加解析として実施した。これらの結果、中緯度成層圏で観測されている「成層圏大気の年齢」の絶対値うちExUTLS からTTLへの大気輸送過程による「aging」効果は0.2-0.7年(3-14%)程度と推定された。経年変動における寄与はより大きくなり、「成層圏大気の年齢」の長期変動のうち2割程度以上に寄与している可能性が示された。また対流圏内においても南北半球間でクロックトレーサーの背景濃度が異なるため、両半球から赤道域への大気輸送とクロックトレーサー濃度の関係を把握しておくことも重要である。この点について赤道対流圏における二酸化炭素分布が大気の長距離輸送に依存していることを流跡線解析により明らかにした。
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Journal of Geophysical Research: Atmospheres
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Atmospheric Environment
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
https://doi.org/10.1016/j.atmosenv.2018.04.016
大気化学研究
巻: 37 ページ: 8-16