地球の大気は層構造を成しており地表面に近い方から対流圏,成層圏と呼ばれている。対流圏で排出された温室効果ガスやオゾン層破壊物質は地球規模の大気循環によって成層圏まで運ばれ様々な問題を引き起こしている。成層圏内の輸送の速さを表す指標としてクロック・トレーサーと呼ばれる物質の濃度から成層圏大気の年齢を推定する手法がある。この手法で推定された成層圏内の輸送速度と別の手法で推定される速度に矛盾が生じており,未解決の謎となっている。本研究では流跡線解析と呼ばれる手法を用いて成層圏内の輸送を調査した結果,両者の矛盾のうち20%程度は熱帯対流圏界層における大気混合過程の長期変動に起因していることを示した。
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