研究課題
衛星搭載ライダを用いて全球で下層雲の雲物理特性を高精度で抽出するには、衛星信号に含まれる多重散乱光成分を高速に精度良く解析する事の出来る手法の開発が必要である。本研究課題では、ライダ後方散乱過程を単散乱成分、時間の遅れのない多重散乱成分、それから時間の遅れのある多重散乱成分(パルス・ストレッチング)に分解して取り扱い、散乱回数に対応した高次の散乱位相関数及び経路の減衰過程の見積もりに経路積分の手法を用いた物理過程モデルの開発を行った(Physical Model: PM法)。この事により、膨大な計算時間を要するモンテカルロ法の様に全ての散乱過程を網羅せずに衛星搭載偏光ライダ信号を再現する事が可能となった。多様な衛星の仕様や均質・不均質な雲微物理量の鉛直構造に関してモンテカルロ法を用いたPM法の検証実験を実施した。その結果、開発した手法により大幅な高速化が達成された事、モンテカルロ法と比較して平均的に15%程度の相対誤差で後方散乱係数を推定できる事、またこれは偏光を扱えない従来の統計的手法の後方散乱係数推定誤差を約4倍、分散を1桁以上改善する事等が分かった。本年度はこれらの研究成果報告を国際誌Opt. Expressや国際学会での招待講演等を通して行った。また、本研究成果を日欧共同EarthCARE衛星の高次アルゴリズム開発や衛星搭載アクティブセンサを用いた雲微物理特性解析へ応用しSpringer Remote Sensing/Photogrammetryに発表した。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Optics Express
巻: 26 ページ: A301~A301
10.1364/OE.26.00A301
Springer Remote Sensing/Photogrammetry
巻: 10 ページ: 195~214
10.1007/978-3-319-72583-3_8
Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 122 ページ: 11,022~11,044
10.1002/2017jd027113
J. Remote Sensing Society of Japan
巻: 37(5) ページ: 434-441