湖水に存在する水銀は、殆どが大気由来の水銀であることが示唆されており、主要な発生源であるアジア圏の風下に位置している日本では大気由来の水銀沈着量が高い可能性が示唆されてきた。しかしながら、本栖湖と摩周湖の湖水中の平均総水銀濃度は0.06 ± 0.04 ng/Lと0.08 ± 0.04 ng/Lであり、またメチル水銀濃度は概ね5 pg/Lの定量下限値以下と、世界的にも低濃度で、比較可能な過去データと比べて約1/10に減少していた。地球規模の水銀汚染によって日本の陸域環境への水銀沈着量が不明だったために懸念されていたが、本研究の結果によって、沈着量および生態系への影響は小さいことが明らかになった。
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