平成28年度までに実施した研究によって、本研究の対象である低層雲を再現するために、従来の解像度では不十分であることが明らかになった。そこで、低層雲を再現するために必要な解像度を感度実験により調べ、低層雲の雲量(被覆率)を再現するために必要な解像度を水平方向12.5m、鉛直方向10mであると明らかにした。 この水平(鉛直)12.5m(10m)といった超高解像度での数値実験は世界でも類に見ないものである。そのため、平成28年度中にこれらの研究成果を学術論文としてまとめ、平成29年度中にAtmospheric Science Letters誌より出版した。 また、これらの計算結果をさらに解析し、低解像度で雲量を再現できない理由を調べた。解析の結果から、今回対象とした低層雲の雲量は雲の下の乱流の構造に大きく依存し、雲量の再現に重要な役割を果たしていることが明らかになった。加えて、雲量の再現には地表付近のシアを解像するために十分なグッリド数が必要であるが、低解像度では地表付近に十分な数のグリッドがないために、乱流構造が再現されず、雲量が再現できていなかったことが明らかになった。これらの解析の結果を投稿論文として投稿し、現在査読中である。 さらに、平成29年度の後半には、本研究の主要な目的である、低層雲の東西太平洋の差異を明らかにするために、西部太平洋の低層雲を対象とした数値実験を行い、東部太平洋の低層雲を対象とした実験結果と比較した。実験結果の解析から、日本付近では、海水面温度が大気最下層の温度より低いこと、および、低層雲の雲頂にできる逆転層が東部太平洋に比べて弱いことが東西太平洋の低層雲の差異を生み出す原因であることを示すことができた。 これらの結果は投稿論文としてまとめるための準備を行っている。
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