研究課題
本研究課題はこれまで安定と思われてきた金星大気スーパーローテーションに近年見出された時間変動性について、観測的事実・理論の両面からその成因を探ることを目的としている。本年度は1. 現実的な金星大気場のなかで東西風速に取りえる変動を与え、惑星スケールのKelvin波、Rossby波の伝搬特性の違いを可視化、2. 金星軌道に投入されたあかつき取得の金星画像解析から、地形に固定された定在構造が大気に存在することを発見、3. あかつきデータ処理に用いたジオメトリ計算を応用し、地球観測衛星においてもこの計算が有効に利用できることを示した。1. 過去の観測から金星雲頂高度において、東西風速に30m/sもの変動が存在することが報告されている。この観測事実に基づき、風速が速い時期と遅い時期を模擬し、さらに中緯度ジェットの有無を加えて金星大気をモデル化し、その中をKelvin波、Rossby波どう伝搬するかを調査した。この結果風速の速い、遅いと中緯度ジェットの有無が合わさってKelvin波、Rossby波の伝搬性に影響を与えることを示し、それぞれ異なる大気加速をもたらすことを示した。2.金星軌道投入時の観測であかつきが発見した巨大な弓状構造について、その後の中間赤外線カメラ(LIR)のデータ解析により、この構造が背景風に流されず定在する波動的現象であることを見出した。これまで見逃されていた風速を減速させうる現象であり、あかつきの主要な成果として発表されている。3. あかつきの画像データ解析で用いられるジオメトリ計算を地球観測衛星に応用し、可視画像に写る地形の位置関係から衛星の姿勢を決定する手法を開発した。惑星探査起源のデータ解析手法が地球観測衛星を含む衛星一般にも適応可能であることを示した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Remote Sensing
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Nature Geoscience
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