研究課題
本研究ではプラズマ波動の生成素過程を詳細に描写する、self-consistentな電磁粒子シミュレーションの手法を介してヒス放射の再現を通し生成素過程の解明を行う。研究を遂行するに当たり、磁気赤道域を想定した不均一磁場かつ波動励起に寄与する温度異方性を有する電子を配置した空間モデルの構築、加えてヒス放射の観測に基づき典型となるプラズマパラメータを採用し、プラズマ圏内を想定した電子プラズマ周波数と電子ジャイロ周波数比を用いてプラズマ環境の構築を行った。種々のパラメータを用いたシミュレーション施行の結果、電子ジャイロ周波数の1/10以下という比較的低い周波数においてホイスラーモード波動の放射を実現することに成功した。以上の計算機実験の結果は、衛星観測におけるヒス放射の統計解析ともよく類似する。また生成波動には非線形波動成長を示唆する周波数構造を確認することが出来た。近年の衛星観測によるヒス放射の高時間分解能データより、ヒスの周波数構造が時間による変化を有し、さらに非線形波動成長理論での説明が可能であることが明らかになった[Summers et al., 2014; Omura et al., 2015]。本研究のシミュレーションでは、ヒス放射の生成過程が従来より広く受け入れられてきた機構とは異なり、共鳴電子との波動粒子相互作用を経ることによりその場で波動が励起するという新たな解釈を与えた。
2: おおむね順調に進展している
本研究のシミュレーションによるヒス周波数帯での低周波ホイスラーモード波動の励起に関しては当初の予定通り進んでいる。多くの計算機資源を必要とするが、今後さらにパラメータを変化させたシミュレーションを行う必要があり、スペクトル構造など詳細な励起プロセスを確認していく。
当初の研究計画通りにプラズマ環境の変化によるヒス放射生成の特性を確認し、波動の線形/非線形成長を理論面からの議論も取り入れることにより、ヒス放射の生成素過程の解明へと繋げていく。
予定していた物品の納品に想定以上の日数を必要としたため該当物品の購入を次年度に持ち越した。
上記の物品は次年度の助成金から使用する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 120 ページ: -
10.1002/2015JA021520
巻: 120 ページ: 9545-9562
10.1002/2015JA021563