研究課題
太陽表面では、太陽面爆発(太陽フレア)に代表される磁気プラズマ現象が絶え間なく発生している。これら太陽フレアや関連して発生するプラズマ噴出現象・コロナ質量放出(CME)は、宇宙空間のプラズマ磁場環境にとって擾乱源となる。そのため、太陽フレアや噴出現象の発生、およびそれらが宇宙空間に与える影響は、「宇宙天気」研究として盛んに研究されている。太陽からの噴出現象はCMEを直接形成し、また噴出現象の前方に形成される「コロナ衝撃波」は、宇宙空間において高エネルギー粒子を加速するなど、宇宙天気研究の中でも特に重要な現象である。本研究は、太陽フレアに付随して観測されるコロナ衝撃波について、その3次元構造を明らかにし、さらはこれらの噴出現象とCMEとの関係を、取得可能なあらゆる観測データを通じて明らかにすることを目的としている。平成27年度は、観測データの取得に重点を置いた。米国NASAの太陽観測衛星SDOによる太陽全面極端紫外線画像(AIA)や同じくNASAの太陽圏観測衛星STEREOによる極端紫外線画像(EUVI)、加えて、京都大学飛騨天文台の太陽磁場活動望遠鏡(SMART)によるH-alpha線観測データなどから、コロナ衝撃波やその原因となるプラズマ噴出現象の観測データをサーベイした。この結果、複数の候補イベントを収集するに至った。中でも、2011年2月16日に発生した太陽フレアおよびプラズマ噴出現象・コロナ衝撃波については、解析を進め噴出現象の3次元速度の時間変化とコロナ衝撃波との関連を明らかにした。これらを学術論文としてまとめ、投稿するに至った。
2: おおむね順調に進展している
候補イベントの取得を滞りなく行えた。また、うち1例について、学術論文としてまとめ、投稿するに至った。このため、本研究は順調に進捗していると認識している。
大きな太陽フレアは、太陽活動期(今期は2014年4月であったと推定されている)を過ぎて数年間発生する可能性が高いため、引き続き大規模なイベントの発生に備え、観測データの入手に努める。また、収集されたイベントについては、さまざまな観測データからの情報を組み合わせることで総合的に物理的特徴を明らかにする。加えて、磁気流体衝撃波についての理論モデル(数値シミュレーション)結果との比較を行う。
研究成果発表用のコンピュータの購入を見送った。これは、平成27年度には、データ取得・解析により重点を置いたため、年度内に急いで購入する必要がなくなったためである。
平成28年度には、研究成果発表用のコンピュータを購入する予定である。データ解析は順調に進んだため、コンピュータの購入の遅れが本研究課題全体の進捗に影響を及ぼすことはない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Transactions of the IAU, by the International Astronomical Union
巻: * ページ: *
Journal of Geophysical Research
巻: 120 ページ: 5318-5328
0.1002/2015JA021076