研究課題/領域番号 |
15K17775
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 桂 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (80402098)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後期完新世 / 貝形虫 / 環境変化 / 汽水湖 |
研究実績の概要 |
島根県と鳥取県に位置する汽水湖の中海湖心部において,長さ約4 mの柱状試料(コア)を採取した.コアを垂直方向に半割し岩相を記載後,軟X線撮影用と帯磁率測定用試料をまず採取した.その後,厚さ約1 cmに分割し,粒度分析および含水率測定,地球化学分析および微化石分析用試料をそれぞれ分取した.微化石用試料については篩上で水洗した.また,半割後すぐに土色計を用いて堆積物の色指数を測定した. コアの堆積年代を調べるため,再堆積の可能性の低い二枚貝殻7試料と植物片2試料を採取し,外部委託により加速器質量分析計によりそれらの14C年代を測定した.その結果,9試料すべてから14C年代が得られ,採取したコアは約2800年前から現在まで連続した堆積物を保存していることが明らかになった. 上記の分析のうち,H27年度は帯磁率測定,含水率測定および微化石分析(貝形虫)を行った.全387試料のうち,およそ9 cm間隔で選択した47試料について,含まれる貝形虫殻を全て拾い出し貝形虫群集の変化を検討した.47試料すべてから少なくとも19属23種の貝形虫が産出した.群集構成に基づくと4つの生物相に区分された.各生物相が示す古環境と堆積年代から,中海の過去2800年間の環境変遷は以下のように復元された.紀元前800年~西暦400年は外洋の影響を受ける内湾,西暦400年~1200年はより外洋の影響が小さい内湾環境,西暦1200年~1650年は閉鎖的な汽水湖,西暦1650年~1800年は一時的に外洋の影響を受ける汽水湖,西暦1800年~1950年は汽水湖で湖底であった.明らかになった古環境変遷は既存研究と一致するが,西暦300年以前については,本研究で詳細な環境が初めて明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,中海湖心部において柱状試料を採取し,高い時間分解能で堆積年代を得た.また,貝形虫による群集解析を行い,およそ予定取りの結論を得た.しかし,当初対象とした年代まで遡って堆積物を採取出来なかった.コア試料の2度目の採取を検討したが,H27年度に採取したコアの試料数がかなりあることから,新たなコアを採取せず,過去2800年間についてより高い時間分解能で検討することとした.
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今後の研究の推進方策 |
連続して産出することが明らかになった貝形虫Bicornucythere bisanensisの成体殻を各試料から4個体以上取り出し,酸素同位体比および炭素同位体比を測定する.H28年度とH29年度にそれぞれ100試料分析し,計200試料について分析予定である.酸素同位体比変動から東アジアにおける夏季モンスーン変動を復元する.また,H28年度は地球化学分析(全有機炭素量,全窒素量,全硫黄量)を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に採取した柱状試料の年代測定を当初は2回に分けて行う予定でいた.採取済み柱状試料の1回目の年代測定が終了し,おおよそ問題ない堆積速度曲線が得られたため,2回目に行う予定だった年代測定の金額をH28年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に採取した柱状試料の年代測定をさらに詳細に行うため,H28年度請求額と合わせて使用する.
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