地震時、断層の運動に伴って非常に大きな摩擦発熱が生じ、断層内部や近傍の母岩の温度を急激に上昇させる。この温度上昇によって様々な地震同時性の化学反応や構造変化が引き起こされ、その痕跡が断層の詳細な化学分析、構造解析から明らかにされてきた。この「地震同時性化学反応」を、断層運動の場を模擬した急速加熱水熱試験によって実験室的に再現・定量化することが本研究の目的である。平成28年度は、この目的の達成のために地震時の摩擦発熱と環境を模擬することを目指した断層の摩擦発熱速度に対応する加熱手法、含水堆積物中に対応する試料の加熱実験システムの構築を行い、断層模擬物質の加熱実験及び実験後試料の炭質物熟成度の測定を行った。その結果、瞬間加熱時の化学反応の進行度は概ね過去に提案されている化学反応の速度論で説明できるものの、定常加熱試験に比べて、その反応進行度において大きなばらつきを示した。特に加熱時間が短いものほど、このばらつきは顕著であった。これは、各化学反応過程において、反応物質(例えば石炭等の炭質物)の反応後の脱ガスなどの進行に大きな差が生じており、それは実験に用いた試料の間隙率や透気係数のばらつきに大きく依存していると考えられる。今後、粉末化した標準試料を用いるなど、物性の不均質をなくした資料を用いて瞬間加熱過程を検証することで、この反応の不均質を説明し、瞬間反応時の律速過程を明らかにすることが可能であると期待される。
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