研究課題
本研究では,統合国際深海掘削計画(IODP)によって東赤道太平洋で掘削された過去800万年間にわたる堆積物を使用し,前期中新世から中期中新世の放散虫化石群集を行った. これら東赤道太平洋放散虫群集変化とRomine and Lombari (1985)による西赤道太平洋(DSDP Site 289)の放散虫化石群集のデータに基づくと,前期中新世末(16.7Ma)以降,赤道太平洋における放散虫化石群集は,東西の類似性が低下していることが明らかになった.このような赤道太平洋における東西群集の類似性低下は,サーモクラインの東西勾配が発達したことを示すと考えられる.サーモクラインの東西勾配が発達した原因は不明である.この時期にインドネシア海峡が部分的閉塞したこと,中央アメリカ海峡におけるパナマシルの上昇や北ニカラグア海嶺の沈降によって,大西洋と太平洋間の海水交換が制限されたことなど,が原因である可能性がある.東赤道太平洋におけるサーモクラインの浅海化は,赤道湧昇流によって下層から低温・高栄養塩の水塊を表層(有光層)へ効率的に運ぶことが可能になったと考えられる.この出来事は,中期中新世に起こった大西洋から太平洋へのシリカスイッチの要因の1つになったと考えられる.前期中新世末から中期中新世初期(およそ17~15Ma)にかけて,Miocene Climatic Optimum (MCO)と呼ばれる汎世界的な温暖化が起こったことが知られているが,本研究によると東赤道太平洋で顕著な温暖化は認められなかった.これは赤道湧昇流の活発化によって,下層から比較的低温な水塊が表層へ上昇してきたことが原因であったと考えられる.最近の大気-海洋モデルは,MCO期に大気中の二酸化炭素濃度が増加し温暖化すると東赤道太平洋で赤道湧昇流が活発化すると報告しており,本研究の結果と整合的である.
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Bulletin of the Geological Survey of Japan
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