研究課題/領域番号 |
15K17781
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
足立 奈津子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40608759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カンブリア紀 / 微生物類礁 / 古杯類 / 絶滅事変 / モンゴル / 中国 |
研究実績の概要 |
本年度,モンゴル西部ザブハン盆地に分布するエディアカラ-下部カンブリア系 (Tsagaan Oloom,Bayan Gol,Salaany Gol層) の野外地質調査をおこなった. 1. Tsagaan Oloom層に分布する,柱状ストロマトライト “Boxonia”とリン酸塩質頁岩の累重を広範囲に確認した. ストロマトライト層は,下位の柱状ストロマトライトと上位のドーム状ストロマトライトから構成され,その上位には,リン酸塩質頁岩が累重する.柱状ストロマトライトと直下の黒褐色塊状石灰岩との関係は,不整である.現在,ストロマトライトの記載と並行して,柱状からドーム状ストロマトライト,リン酸塩質頁岩への累重が示す,堆積・生息環境の変遷について検討を進めている. また,Tsagaan Oloom層上部からは,石灰質微生物類EpiphytonやRenalcisから構成された多数の微生物類礁を確認した. 2. Salaany Gol層の礁を対象として,古杯類が大繁栄した時期の「礁の構築様式」を背後の海洋環境との関連から検討した.(1) 3つのタイプの古杯類礁 (樹状,層状,樹状-層状-杯状古杯類) が識別された.(2) 層状古杯類礁と樹状-層状-杯状古杯類礁では,石灰質微生物類による礁の枠組み間への二次的な被覆・充填作用に代わり,「堆積時同時セメントの充填作用」が枠組み構造の補強と維持に重要である.(3) セメントの豊富な古杯類礁との地域的・時代的な比較・検討から,「多様な成長形態の古杯類礁の大繁栄」,「礁内部での隠棲環境の卓越」,「汎世界的なアラゴナイト海の支配」の存在が明らかになった. 3. 生物大量絶滅事変直後の微生物活動や海洋環境を明らかにするために,最下部トリアス系ストロマトライト (南中国湖北省) についても検討を進めてきた.本内容に関しては,国際学術誌に論文が公表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古杯類の大繁栄期とそれ以前の「礁の構築様式」に関するデータを順調に獲得・蓄積することができている.Salaany Gol層から産出する,「古杯類礁大繁栄期の礁の特性」については,日本地質学会にて本年度発表をおこなった.本発表は,「優秀ポスター賞」として表彰された.また,研究実績の概要1, 2で挙げた研究内容に関して,本年度の調査は順調に終了し,現在,「各礁の構築様式」についての記載を進め,論文としてまとめている.以上のことから,おおむね順調と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに調査をおこなったモンゴル西部ザブハン盆地Bayan Gol地域,Zuune Arts地域以外に,本年度新たに,Salaany Gol地域とTsagaan Gol地域でも野外調査をおこなうことを予定している.Salaany Gol地域では,特に,古杯類大繁栄期の礁の構築様式に関して,データの充実を図る.また,モンゴル西部ザブハン盆地 (Tsagaan Gol地域) や北中国山東省で,古杯類礁消滅以前・以降の「礁の構築様式」に関してもデータを獲得する.これらの調査・研究を基に,カンブリア紀に生じた古杯類礁の消滅前後での「生物相の変遷」と「地球表層環境の変動」の実態を実証的に明らかにしていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究延長にともない,予算の再配分をおこなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度研究計画に基づいて,野外地質調査の費用や研究成果の発表の費用として主に支出する予定である.
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