研究実績の概要 |
カンブリア紀第二世末に生じた礁生態系の大規模崩壊前後での造礁生物群集の変遷と海洋古環境の変化を明らかにする目的で,本年度,モンゴル西部ゴビ・アルタイ地域と北中国山東省地域の最上部エディアカラ系からカンブリア系第二統の礁の野外地質調査をおこなった. 1) モンゴル西部には,最上部エディアカラ系からカンブリア系第二統の礁の変遷が明瞭に記録されている.Zuun-Arts層最下部 (最上部エディアカラ系) では,柱状やドーム状形態を示すストロマトライト礁が特徴的に発達する.それらは,ペロイド状粒子,ミクライト質クロッツによって形成されており,石灰質微生物類は認められない.Bayan Gol層下部 (最下部カンブリア系) に初めてスロンボライト礁が構築される.その出現は,当該地域での石灰質微生物類の出現や微小骨格化石群の出現,生痕化石の多様化と同時である.Salaany Gol層 (カンブリア系第二統) の礁は,樹状や層状,杯状の多様な形態を示す古杯類と石灰質微生物類 (Epiphyton, Renalcis等),セメント (初生アラゴナイトのボトリオイドセメント等) によって形成された.これらは,古杯類大繁栄期の礁に相当する. 2) 北中国山東省朱砂洞層の礁 (カンブリア系第二統) は,Salaany Gol層の礁と同時代である.しかし,朱砂洞層からは古杯類は産出せず,多様な石灰質微生物類 (Epiphyton, Renalcis他) によって形成されたスロンボライトやストロマトライト礁が発達する.朱砂洞層上位の張夏層 (カンブリア系ミャオリン統) の礁も同様にスロンボライトやストロマトライト礁が主体であるが,石灰質微生物類の構成は大きく異なる.礁生態系の崩壊前後で石灰質微生物類の群集構成にも変化が生じていたことが推定される
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