研究課題
本年度は三波川変成岩中の剪断クラックの調査,東南極セールロンダーネ山地の反応帯調査,サンアンドレアス断層直上レッドウッド蛇紋岩岩体の調査から,クラック生成,岩石ー流体反応に伴う組織形成と物質移動を明らかにすることができた.三波川変成岩中の剪断クラック調査では,剪断クラックと開口クラックの分布を測定できる非常に条件のよい露頭を調査した.空撮マルチコプターを用いてクラックの分布を数10 mに渡り撮像,画像解析によりその分布を解析した.また,クラックの集中する~10x10 mほどの露頭において,約40サンプルほど系統的にサンプリングを行い,薄片観察,カソードルミネッセンス観察,鉱物化学組成により分類した.これらの系統的なサンプルの化学分析から流体流れフラックス解析を進行する予定である.東南極セールロンダーネ山地の花崗岩質メルト貫入によるクラック生成と岩石ー水反応では,クラックが水流体に飽和しており過剰流体が系外へ流出していたこと,反応帯の形成は母岩側の溶脱反応が律速していることを明らかにした.サンアンドレアス断層直上レッドウッド蛇紋岩岩体の調査では,蛇紋岩ブロックを覆う剪断クラックと,蛇紋岩化反応による開口クラックがカップリングしており,水流体の流入が蛇紋岩化反応・ブロック化と変形を促進し,反応と変形のカップリングにより開口クラックと剪断クラックの複雑なフラクチャーネットワークを形成したことを明らかにした.
3: やや遅れている
本年度は,三波川変成帯中の剪断クラックの野外調査およびサンプリングを重点的に行うことができた.また,試料の解析から鉱物脈の分類が進行しつつある.東南極の反応帯やサンアンドレアス断層沿いの蛇紋岩の調査では,クラッキングと岩石ー流体反応の関係性を明らかにできた.一方で,三波川帯の剪断クラックについては流体フラックス・流速・応力の解析はこれからであり,測定値から物理データの推定には時間を要している.
本年度,調査・採取した各鉱物脈の組織および化学組成に基づいた分類により,各鉱物脈化学組成から流体総流量の推定を,粒径分布解析から流速の推定を,方解石双晶の間隔から最大差応力の推定をおこなう.これらの解析を同露頭内のクラスターに適用することで,流体流量・流速・応力の空間分布を明らかにし,剪断クラックの力学ー水理学関係を解明する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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