研究課題/領域番号 |
15K17788
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
西山 直毅 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 特別研究員(PD) (30746334)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 吸着 / 電気二重層 / ナノ間隙 / シリカ / 表面電荷 / 鉱物/水界面 |
研究実績の概要 |
溶存物質の鉱物への吸着は,地下水中の汚染物質や有用元素の移動・濃集を支配する重要な素過程である.表層環境では,風化・熱水変質作用を起源とするエッチピットや,微細な粘土鉱物・鉄水酸化物等の集合体がしばしば見られる.これらはナノ~サブミクロンサイズの間隙を持ち,大きな比表面積を有するため,イオンの吸着挙動に対して重要な役割を担うことが予想される.そこで本研究では,イオン吸着を支配する因子である鉱物表面の電荷に着目し,ナノ間隙の表面電荷特性を明らかにする. 本年度は,間隙サイズが異なる2種類の多孔質シリカを用いて酸/塩基滴定実験を行い,単位面積あたりの表面電荷と間隙サイズの関係を調べた.まず,窒素ガス吸着法による間隙径分布と比表面積の測定を行った.その結果,用いた多孔質シリカは,半径2 nmと50 nmの間隙が卓越することが分かった.次に,イオン強度をNaClで調整した水溶液に多孔質シリカを分散させ,酸/塩基滴定実験を行った.実験は全て窒素雰囲気下で行った.得られた表面電荷は,間隙が細いシリカほど小さく,表面電荷が間隙サイズに依存することが明らかとなった. 既存の吸着モデルでは間隙サイズの影響は考えられていないが,本研究の結果はイオン吸着挙動を定量的に扱う上で間隙サイズの効果を加味する必要があることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた,様々なイオン強度・pH条件下での多孔質シリカの表面電荷密度の測定を行い,間隙サイズと表面電荷の関係を調べた.開始当初,大気中の二酸化炭素の影響が懸念されたため,窒素ガスを流通させたグローブボックス内で測定を行う等,最適な実験条件・環境の整備を行った. また,既存の地球化学計算コードにおける吸着モデルと同等の計算を行うことのできるプログラムを作成した.今後はこのモデルを改良し,間隙サイズの効果を組み込んだ吸着モデルの構築を行っていく予定である.以上を踏まえ,おおむね計画通りに進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,ナノ間隙の表面電荷密度の測定を行う.具体的には,間隙サイズ6, 10, 15, 30 nmの多孔質シリカや多孔質アルミナを試料として用い,間隙サイズ-表面電荷-鉱物種の関係を系統的に明らかにする.鉱物/水界面では通常,デバイ長と呼ばれる特徴的長さの範囲に電気二重層が形成されており,イオンが濃集(吸着)する.しかし,ナノ間隙では電気二重層が圧縮され,イオンの分布が異なる可能性がある.この効果をモデル化し,実験から得た間隙サイズと表面電荷の関係を定量的に解釈する.
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