研究実績の概要 |
本年度は、オマーンオフィオライト海洋地殻試料について、主要・微量元素分析を行った。試料は、堆積物ー地殻境界からモホ面までの厚さ約5kmの海洋地殻を網羅する約90個の岩石粉末試料である。主要元素(Si, Al, Fe, Mg, Ca, Na, K, Ti, P)については、ガラスビードを作成し、蛍光X線分析装置(XRF)を用いた分析を行った。強熱減量(LOI)についても、現在分析を進めている。微量元素(Li, Rb, Cs, Ba, U, Pb, Cu, Zn, Mn, REEなど)については、試料を硝酸とフッ化水素酸の混酸を用いて酸分解し、ICP質量分析装置(ICP-MS)を用いて分析を行った。分解に際し、ジルコン及びバデレライトは通常の方法では十分に分解せず、正確なZr, Hf, Y, HREEの定量が出来ないため、シート状岩脈群及びハンレイ岩については、高圧分解装置を用いて、190℃で12時間の分解を行った。これらの分析作業の補助のために、テクニカルスタッフ1名を雇用した。分析においては標準岩石試料(JB-3など)を同時に分析し、良好な値が得られることを確かめた。以上のデータを用い、変質前の海洋地殻の化学組成や、各変質帯の熱水変質における各元素の挙動について、解析を行った。パシフィコ横浜で行われたゴールドシュミット国際会議に参加し、海洋地殻の熱水変質に関する最新の研究について情報収集を行うとともに、先行研究の文献資料を収集して、これまでの知見を整理した。
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