研究課題
本研究はセリウム(Ce)異常・Ce化学種・Ce安定同位体比の三位一体の分析という、研究代表者が実験系での基礎データから研究を進めてきた新たな地球化学的指標を用いて地球史における海洋酸化還元状態を解明することを目的としている。平成27年度は、Ceの分離抽出法および安定同位体比測定条件の確認を行った後に、東京工業大学地球史資料館に保管されている浅海成炭酸塩試料のCe異常・Ce化学種・Ce安定同位体比分析を行う予定であった。研究代表者はこれまでに実験系およびモダンアナログ試料のCe安定同位体比分析を行っているものの、所属を(本課題申請時の東京工業大学へと)異動してからは初となるので、高精度の安定同位体比分析のために諸条件の確認が必須であった。東京工業大学の実験室はブランクが高く、実験環境の改善に時間を要した。しかし、この間にCe分離法の改善に成功している。10月に現所属へ異動があったため再度分析条件の確認を行い、現在は問題なく測定できる状況になっている。また、東京工業大学地球史資料館に保管されている浅海成炭酸塩試料の選定および粉末化を行った。なお、より高精度での古海洋酸化還元状態の復元に向け、様々なpH条件下での固液間でのCe安定同位体分別についての実験を追加で行っている。炭酸錯体がCeの主要溶存錯体種となる高pH条件下では、Ceの自発沈殿が生じる際に同位体分別の方向が逆になることが示された。この結果は、やや酸化的な環境(Ceの自発沈殿生成)から酸化的な環境(マンガン酸化物への酸化的吸着)へと遷移する過程が従来にない精度で明らかになることが期待されるものである。
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者の所属異動により、Ce分離抽出法の確認に時間を要したものの、より良い分離法の確立が行えた。さらに、様々なpH条件下での固液間でのCe安定同位体分別についての実験を追加で行い、やや酸化的な環境から酸化的な環境へと遷移する過程が従来にない精度で明らかになることが期待される結果を得た。
平成27年度に選定し、粉末化を終えている浅海成炭酸塩試料のCe異常・Ce化学種・Ce安定同位体比の三位一体の分析を行い、地球史における海洋酸化還元状態の解明を試みる。現段階において、Ceの分離抽出法の確認および改良により、Ce安定同位体比測定を行う上での支障はなくなっている。また、放射光のビームタイムも確保できたため、Ce化学種分析も実施可能な状況にある。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Chemical Geology
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http://www.jamstec.go.jp/res/ress/nakadar/findings/finding2.html