本研究の目的は、乱流の非線形ダイナミクス、特に非線形混合過程に焦点をあて、流れの効果や運動論的効果を取り込んだ理論を構築することにある。今年度の研究で得られた主な成果として、i.) ドリフト波乱流が引き起こす運動量の混合過程において非局所効果の重要性を提唱したこと、ii.) 平行流れを取り入れた乱流における非線形混合過程に着目し、波数空間におけるエネルギー移送のモデルを構築したこと、がある。 まず、ドリフト波乱流による運動量の混合過程において成果を得ている。磁場閉じ込めプラズマの周辺領域において発達した強いドリフト波乱流の対称性がトロイダル流れのシアにより破られ、有限の運動量を持つようになる。この揺動の運動量が、非局所的に伝わることで炉心領域の流れを駆動しうることを理論的に見出した。核融合プラズマで報告されている実験事実との比較検討を進め、動的応答を含む実験提案を行うことができた。 次に、平行流れが駆動する乱流における波数空間のエネルギー混合過程を解析した。非線形発展の結果、初期に駆動された不安定生がエネルギーをより大きなスケールの渦にエネルギーを移送することが明らかとなった。平行流れ乱流においても2次的な構造が生じることを理論的に予測し、輸送解析における重要性について指摘することができた。さらに、複数の2次構造が励起されうることを示し、構造形成の選択則まで踏み込んだ解析を行うことができた。 これらに代表される成果を、計4編の学術論文として発表した。核融合学会最大規模のIAEA核融合エネルギー会議等の国際学会にて発表を行い、成果を発信している。
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