研究実績の概要 |
本研究の目的は、乱流の非線形ダイナミクス、特に非線形混合過程に焦点をあて、流れの効果や運動論的効果を取り込んだ理論を構築することにある。昨年度までの研究から、ドリフト波乱流における位相空間構造の役割に着目した論文を出版し、位相空間構造が実験で報告されている非局所過程と関連している可能性について触れた。 今年度の研究では、この中で得られている位相空間自由度を含んだ乱流の非相関時間を用いた解析を進めた。磁場方向の電子の運動(断熱電子)を取り入れたモデルから輸送束の時間発展を記述するモデルの導出を行い、従来の電子を含まない簡約化されたイオン温度勾配駆動乱流における熱輸送束の時間遅れモデルの拡張に成功した。非断熱電子の場合への拡張を行い、捕捉電子乱流における凹凸型密度分布構造の生成への応用に関する検討を行った。 その一方で、波数空間におけるエネルギー移送の問題に着手した。これにより乱流がエネルギーを他のスケールへと移送する過程として変調不安定性が重要となることを導出し、この変調不安定性を制御する重要なパラメーターとして平行シア流れの存在について指摘した。シア流れが弱い場合にはドリフト波乱流が励起され非線形的に帯状流を生み出すのに対し、平行流れを強くすると径方向に伸びた対流胞の成長が卓越することを見出した。 得られた成果については、主要な国内外での学会(Plasma Conference 2017, Festival de Theorieなど)にて招待講演として報告した。国際的学術誌Phys. Plasmas にて論文を出版した。
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