本年度は,スーパーオキシドアニオンと二酸化炭素・一酸化窒素が関与する反応系を主な対象として以下の成果を得た. (1) CO_4負イオンの生成と分光:酸素/二酸化炭素混合クラスターへの電子付着過程によって,クラスター内O_2- + CO_2反応を進行させ,CO_4(CO_2)nクラスター負イオンを生成した.光電子分光と量子化学計算から,CO_4負イオン(n = 0)はperoxy型OOCO_2構造の分子負イオンと同定した.また,n>1のクラスター負イオンは,CO_4負イオンをイオンコアとしたOOCO_2(CO_2)n溶媒和型クラスター構造であることを明らかにした. (2) ONOOCO_2負イオンの気相単離と分光:前項(1)で生成したCO_4(CO_2)nクラスターを反応試剤として一酸化窒素NOと反応させることで,ONOOCO2負イオン(nitrosoperoxycarbonate)を気相中に単離し,シス・トランス両方の構造異性体が生成していることを明らかにした.この負イオンは生体内過程であるONOO-(peroxynitrite)とCO_2の反応の中間体と考えられてきたが,実験的には未検出であった.本研究では,この反応がCO_2クラスター内で進行するため,CO_2溶媒の蒸発に伴うエネルギー緩和によって中間体イオンの捕捉が可能となったと考えられる. (3) CS_3負イオンの分光:クラスター内イオン分子反応の新しい適用例としてS-+CS_2反応に着目し,CS_2/Ar超音速ジェットの放電イオン化を利用してCS_3負イオン生成した.S-がCS_2のC原子を攻撃すると炭素中心型CS_3-が,S原子を攻撃すると直鎖型SCSS-が生成することを明らかにした.
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