研究課題/領域番号 |
15K17807
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
東 晃太朗 電気通信大学, その他部局等, 助教 (70721249)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / XAFS / CT |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池(PEFC)において、燃料電池の起動・停止動作によるカソード電極触媒の劣化が喫緊の課題の一つとなっている。その触媒劣化の主要因は炭素担体の腐食によると考えられ、空間全体に斑を持って広がっていることが分っているが、詳細な原因と劣化機構は明らかでない。そのため、次世代高耐久PEFC開発のために、触媒粒子の劣化がどのように空間的に広がっていくかをその場3次元解析することが望まれている。本研究は、新たに開発したin-situ XCT-XAFS法を用いることで、起動・停止動作による触媒劣化を3次元空間でin-situ(オペランド)解析し、詳細な劣化要因とメカニズムを解明することを目的としている。 2015年度においては、まず印加電圧に応答するPt触媒粒子の空間分布を解析するため、種々の炭素担体にPt粒子を担持した触媒をカソード触媒として使用したMEAについて、炭素担体の腐食が特に進行する1.0 V - 1.5 V三角波劣化加速試験を行った前後に、印加電圧を0.4 Vおよび1.0 V印加しながらin-situ XCT-XAFS測定を行った。その結果、Pt/KB触媒を使用した試料で劣化試験後において、同一視野中にPt量分布が大きく減少した領域が生成されている結果が得られた。これは劣化加速試験による炭素担体の腐食により、担持されていたPt粒子の移動によると推察される。 次に、カソード触媒層にPt/KB触媒を使用したMEAについて、実走行時の起動・停止動作に相当するアノードガス交換を300回繰り返した前後で、同様に印加電圧を0.4 Vおよび1.0 V印加しながらin-situ XCT-XAFS測定を実施した。同測定結果については現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度に実施を予定していた電圧印加環境下における測定、およびアノードガス交換による劣化前後の測定については順調に実施することができた。当初懸念されていた測定中における試料の位置ずれについても、測定結果に対して各測定エネルギー毎に位置補正を行うことで、問題なくXCT-XAFS画像解析が行えることが実証できた。ただし、燃料電池発電環境下における測定のため、供給ガス中の水蒸気および生成される水によって発生するノイズの低減が必要であることがわかった。また、一番のボトルネックとなっているのがCT画像解析にかかる時間であり、それを解消するためCT画像解析用サーバの導入を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度については、まず測定実施済みの実走行時の起動・停止動作に相当するアノードガス交換による劣化前後のCT画像解析を進める。また並行して、測定実施中における水の生成によるノイズの低減を図り、CT画像解析の手順の最適化を行い、画像解析の精度を上げる。その後、使用する炭素担体を変えて同様の実験を実施し、それぞれのMEAにおける劣化の進行の差異を捕らえ、最終的に起動・停止動作に相当するアノードガス交換による劣化の詳細な原因と劣化機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初作製・購入を予定していた改良型PEFCセルが、保有するプロトタイプセルの改良によって充分に目的の性能を達成できることがわかったため、セル購入費として計上した金額分残金がでた。
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次年度使用額の使用計画 |
CT画像解析に予想よりも時間がかかることがわかったため、当初予定していなかったCT画像解析用サーバの導入を検討している。CT画像解析用サーバの導入により、すばやい解析と限りあるマシンタイムの有効活用ができると期待される。
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