研究課題/領域番号 |
15K17809
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中農 浩史 京都大学, 工学研究科, 助教 (20711790)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イオン液体 / ソルバトクロミズム / QM/MM / 分子動力学法 / 電子移動 |
研究実績の概要 |
本課題は、量子化学計算と分子動力学計算法を組み合わせた新規理論手法を開発し、極性ドメインと非極性ドメインに分離するイオン液体中で起こる化学反応や光吸収に対する溶媒効果を、原子レベルで定量的に調べることを目的としている。QM/MM-MD法はそのために用いられる代表的な理論手法であるが、実験に対応した意味のある結果を得るためには、信頼性の高い高精度電子状態理論の使用と十分な統計サンプリングの両立が不可欠である。しかし(1)ドメイン分離したイオン液体はその粘性の高さと不均一性のため溶媒配置の十分なサンプリングが非常に難しく、(2)またその強い溶質溶媒間相互作用を効率良くかつ安定に評価する必要がある。 昨年度は(1)の問題を解決出来るQM/MM法をベースとした凝縮相中の励起エネルギー計算法を開発し、水やイオン液体以外の溶液中での吸収スペクトルの計算を可能にした。本年度はイオン液体にその手法の適用を可能にするべく上記(2)の問題の解決に取り組んだ。当初考えていた電子密度をベースとした電荷演算子を開発・実装したが、相互作用を記述する場合に問題が生じることが判明したため使用を断念した。しかしその過程で本課題で対象とする系においては従来の電荷演算子が有効に働くことが明らかになったため、昨年度開発した方法をイオン液体を溶媒とする系に適用し計算を開始した。計算で得られた最大吸収エネルギーとソルバトクロミズムは実験値とよく対応し、本手法の有効性を裏付けることが出来た。また色素分子と溶媒間の相互作用について、イオン液体と他の溶媒の違いを解析し新たな知見を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一番の難所である方法の開発は終わり、後は計算と解析に集中することになる。
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今後の研究の推進方策 |
開発した方法を用い、まずアニオンが異なる数種のイオン液体について計算を行い、色素分子‐溶媒間の相互作用とソルバトクロミズムに対するアニオン種の影響について調べる。その後、アルキル鎖長の異なる数種のイミダゾリウムカチオンからなるイオン液体について計算を行い、ドメイン分離とソルバトクロミズムの関係を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より旅費が少なくて済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究をより円滑に進めるため、計算機のCPU購入に一部充てる予定である。
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