研究課題/領域番号 |
15K17811
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
赤間 知子 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (60580149)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 効率的時間発展法 / ユニタリー性 / 拡散方程式 / 反応速度式 / 双曲線関数 |
研究実績の概要 |
本研究では、汎用的で効率的な時間発展法として、演算子変換により導出された3項間漸化式に基づく時間発展法(3項間漸化式法)を開発することを目的としている。 これまでに (A) Schroedinger方程式や量子Liouville方程式 に対して3項間漸化式法を開発し、この手法の拡張を行ってきたが、今年度は、3項間漸化式法を (B) 拡散方程式や反応速度方程式 に応用する研究を行った。 濃度の拡散や熱伝導を記述する拡散方程式や反応速度方程式(B)は、虚数単位iを除けば(A)の方程式と同様の形を持ち、これらの形式解の中には(A)の場合と同様に指数関数が現れ、時間発展演算子を定義することができる。(A)の場合は時間発展演算子中の虚数単位iを含む指数関数を、Eulerの公式を用いて正弦関数と余弦関数で書き換えて式変形を行い、3項間漸化式を導出した。これに対し、(B)の場合は時間発展演算子は虚数単位iを含まないので、指数関数を双曲線正弦関数・双曲線余弦関数を用いて書き換えることで式変形を実現した。そこで、双曲線正弦関数または双曲線余弦関数を用いた演算子変換を定義することにより、シンプルな3項間漸化式が導出できた。(B)の場合の3項間漸化式は、(A)の場合とは符号が少し異なるが同様の形を持ち、計算の効率化が見込めることを明らかにした。このように、(B)拡散方程式や反応速度方程式に対して3項間漸化式法の定式化を行い、様々な時間依存方程式に適用可能な汎用的な時間発展法であることを確認した。今後は、この定式化に基づいてプログラムを実装し、数値検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、昨年度の研究で途上となっている時間依存演算子の場合の3項間漸化式法の定式化に引き続き取り組み、また、平成27年度中に提出した「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認申請書」に記載した研究計画に沿って、非エルミート演算子・時間依存演算子の場合のプログラム実装と数値検証を行う予定であった。 しかし、第2子の妊娠により、これらの研究を進めることが体調面等から少し難しくなったため、来年度に予定していた拡散方程式や反応速度方程式への応用の研究に先に着手し、定式化等を行った。 また、第2子を妊娠し平成29年10月に出産し、その後保育所に入れず待機児童になったため平成30年3月まで育児休業取得することになり年度内に職場復帰できなかった。このため、今年度の後半は研究を進めることができなかった。 以上の理由から、当初の予定よりはやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に定式化を行った拡散方程式や反応速度方程式への応用の研究を進め、プログラムの実装と計算効率・精度の検証を行う。また、今年度までの研究で途上となっている時間依存演算子の場合の定式化、非エルミート演算子や時間依存演算子の場合のプログラム実装と数値検証も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:第2子を妊娠し平成29年10月に出産し、その後保育所に入れず待機児童になったため平成30年3月まで育児休業取得したことにより、平成29年度の6月以降に予定していた学会への参加や出張を見合わせたため。また、約半年の研究中断により、研究費の使用時期が延期されたため。
使用計画:昨年度延期した図書・文房具・記録メディア等の消耗品の購入及び英論文校閲費、出張旅費、学会参加費等として使用する予定である。
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