研究課題/領域番号 |
15K17814
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
乙須 拓洋 埼玉大学, 研究機構研究企画推進室, 助教 (90564948)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛋白質折れ畳み |
研究実績の概要 |
溶液中での蛋白質の動的性質理解は蛋白質が示す様々な生理学的機能を理解する上で重要である.本研究は平衡状態での蛋白質ダイナミクスを解析するために開発された二次元蛍光寿命相関分光法を,非平衡ダイナミクス検出可能な手法へ改良し,蛋白質―リガンド複合体形成機構の解明に向けた研究を行うものである.そのために,本研究ではケージド化合物を用い,焦点領域内でケージド化合物からのリガンド放出を引き起こすと同時に,リガンド濃度増加により引き起こされる蛋白質-リガンド間相互作用を追跡する.本年度はそのための装置開発を行った.本装置では通常の共焦点顕微鏡システムを改良し,ケージド化合物の放出を誘起するための紫外光と蛋白質のダイナミクス検出用の可視光を同軸上で対物レンズに入射する必要がある.これら2つのレーザー光を準備するため,775nmの基本波を光パラメトリック発振器に入射することで,540nmの可視光を得ると同時に,基本波の残りを非線形結晶を用いて二倍波にすることで,紫外光を得た.また,ダイナミクス検出時に紫外光による影響が出ないように紫外光の繰り返し周波数をパルスピッカーで可視光の半分に調整し,可視光のみ照射されたときの信号を検出,解析できるよう解析プログラムの改良も行った.その後,装置の性能をテストするために,ケージド化合物としてケージドカルシウムを用い,カルシウムが紫外光により計画通り放出されているかどうかをカルシウム感受性色素の蛍光強度の増加を同軸入射している可視光によって検出した.実験の結果,立ち上げた装置によりカルシウムイオンが焦点領域内で増加していることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示した実績は研究計画において初年度に遂行を予定にしていたものである.ゆえに,それらが達成されたという事は,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画通り,蛋白質を試料とした実験を行っていく.そのためには,構造ダイナミクス検出のための蛍光色素を目的蛋白質に結合させる必要がある.まず,ターゲット蛋白質にアミノ酸変異を導入したミュータント蛋白質を大腸菌を用いて発現,精製する.今回はカルシウム結合蛋白質であるカルモジュリンについて,変異体を作成する.その後,色素を付与し,本装置を用いた測定を行う.測定では昨年度用いたケージドカルシウムを用い,カルシウムの増加に伴うカルモジュリンーカルシウム間相互作用を本装置で検出,解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
測定に用いる蛋白質試料の作製(変異体作成,大腸菌培養等)を行う予定であったが,当該年度中にそこまで研究を進めることができなかったため,未使用額が生じた.また,学会発表を行う予定でいたが,研究の進捗状況がそこまでには至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については,前年度達成できなかった蛋白質試料作製のための費用,ならびに成果報告(学会発表,論文投稿)のための費用に充てる.
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