研究課題/領域番号 |
15K17815
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水上 渉 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (10732969)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ポテンシャル曲面 / 分子力場 / 機械学習 / QM/MM / 分極可能力場 / 第一原理計算 / 量子モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
酵素のプロトン移動反応の反応経路を、多自由度を露に考慮して”Full Quantum”に決定し、 量子効果を活用するために生体分子が持つ仕組み(構造・振動運動上の特徴)を明らかにすることを本研究では目的としている。そのためには、核の量子効果を定量的に扱えかつ数千自由度を扱い得る方法論の開発と、定量的な酵素反応系のポテンシャル曲面を構築する方法の2点が必要となる。
H27年度はポテンシャル曲面の構築方法に絞って研究を進めた。近年我々は機械学習の方法を用いることで Gas Phase に対する精密なポテンシャル曲面を半自動的に構築する方法を確立しており、その凝縮相への拡張を目指した。 我々の手法は出発点となる系を定性的に記述できるポテンシャルを改善していく手法であり、出発点となるポテンシャル関数が必要となる。本年度は EVB を出発関数とするプロトコルに取り組んだ。Gas Phase では上手く機能することを確認できた。現在、酵素系に対しての拡張に取り組んでいる。また、分極可能力場の作成のテストケースとして、小分子である共結晶系に対する AMOEBA 力場の開発もおこなった。 点電荷モデルでは記述の難しいハロゲン結合の異方性などを再現することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポテンシャル曲面の方法論の構築とその精度確認が初年度の目的であった。 この内方法論の構築のほうは概ね順調に推移しているが、テスト系として選んだ酵素反応用のポテンシャル曲面の作成が完了していない。 ポテンシャル構築の出発点となる EVB の作成が現段階では Black Box におこなえないため当初予想しているより、やや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
H27年度で完了しなかった酵素反応用のポテンシャル関数構築を終わらせ、そのテストに移る予定である。 その後は研究計画通りに、量子モンテカルロ法を使った反応経路計算のプログラムを開発する。基盤となる量子モンテカルロ法自体は既に実装済みであり、テスト系となるマロンアルデヒドのポテンシャルも過去に構築済みである。算出した反応経路はインスタントンで求めたものと比較する。 最終年度で必要となるポテンシャル構築に必要なデータ点の生成も並行しておこなう予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究申請時は理化学研究所所属であったが、所属が九州大学にかわり所属研究室も変わったことが主な理由である。この結果として研究に必要なマシン環境が様変わりし、開発用の大規模なメモリとディスクを持つコンピューターは必要なくなる一方で、計算資源確保のために研究費が必要な状況となった。そこでH27年度は研究費の使用を抑えることとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は主にH28年度及びH29年度に九州大学や名古屋大学などの共用計算機を借りることに使用するつもりである。既に本年度に両大学の計算機を試験的に借りており、準備は進んでいる。
|