研究課題/領域番号 |
15K17822
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東野 智洋 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90711804)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機化学 / ピロール / ポルフィリノイド / 典型元素化学 |
研究実績の概要 |
近年、新たなπ共役骨格の開発を目指した研究が盛んに行われており、ポルフィリノイドは様々な分野で広く活用が期待されている骨格である。加えて、硫黄やケイ素、リンといった典型元素をπ電子系に組み込むことは、典型元素に由来する新たな特性を発現しうるとして注目されている。 本研究では、ヘテロールが縮環した新奇なポルフィリノイドの開発を目指し、まずはオリゴピロール骨格と典型元素を組み合わせた、新たなπ共役ユニットとしてのビスピロロへテロールの合成を行った。典型元素としてケイ素・リン・硫黄を導入した一連のビスピロロヘテロールの合成に成功し、その物性を系統的に評価することができた。またその結晶構造解析の結果から、ハイブリッドラジアレン構造を有することを明らかにした。またピロールが縮環したハイブリッドラジアレン構造であるために、よい電子ドナーとして期待されることも見出した。 その後、本研究で開発したビスピロロヘテロールの一つであるビスピロロホスホールを活用することにより、ホスホール縮環ポルフィリンダイマーが得られることを見出した。この化合物はポルフィリンダイマーとしてのπ共役系が大きく広がった性質と、ホスホールとしての高い電子受容性の両方を示す非常に興味深い分子である。その物性については未解明な面が多いが、さらなる分子修飾などにより物性のチューニングが可能であると考えられ、基礎化学のみならず有機エレクトロニクス等への応用においても魅力的な分子であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連のビスピロロヘテロールの合成に成功し、ハイブリッドラジアレン構造を取ることを見出しただけでなく、その物性を系統的に評価することにより典型元素の種類によってπ共役系に与える影響が変化することを実証することができた。また本研究で見出したハイブリッドラジアレン構造は現在でもその報告例は限られており、新たなラジアレン類縁体の合成に繋がるものと考えられる。 また当初の戦略どおりにホスホール縮環ポルフィリンダイマーの合成にも成功しており、ポルフィリンダイマーとホスホールの両方の性質をあわせ持つという、非常に魅力的な分子であることを見出している。これは、チオフェンやシロールといった他のヘテロールを用いたヘテロール縮環ポルフィリンダイマーの合成にも大きな期待が持てる結果である。このように、一連の化合物を合成するための手法を着実に築きつつあり、それにより詳細な物性の解明が十分期待できることから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したビスピロロホスホールを用いることでホスホール縮環ポルフィリンダイマーの合成に成功しているため、その物性について詳細に明らかにするとともに、ホスホール部分あるいはポルフィリン部分を修飾することで物性のチューニングを行うほか、分子構造を制御することにより固体中での分子配向をコントロールし、デバイスへの展開の可能性を探ることを検討している。 また、ホスホール以外にチオフェンやシロールといったヘテロールを用いたポルフィリンダイマーの合成も試み、ホスホールと異なる物性が見られるかどうかについても検討する。特にチオフェンの場合には、ホスホールよりも共役系がポルフィリンと相互作用しやすいと考えられるので、その物性については注意深く調べることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、合成が比較的難しいと考えていたため、数多くの合成ルート検討や、試薬のスクリーニングが必要であると予想していたが、実際に目的とした分子の合成ができたことから、物品費に余裕ができたことが理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は化合物の合成だけでなく、その物性の調査や有機エレクトロニクスへの応用展開を目指す場合のデバイス作製などの消耗品を購入するための物品費として使用する予定である。また、着実に研究が進展していることから、学会発表等のための旅費としての使用も検討している。
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