フラーレンやカーボンナノチューブなどのボウル状・リング状芳香族化合物群は、優れた電荷輸送特性や発光特性を有するため、これらの電子・光物性に着目した研究が盛んに行なわれている。中でも複数のベンゼン環が各々パラ位で結合したリング状構造のシクロパラフェニレン(CPP)類は、その特異な構造により鎖状分子とは大きく異なる物性を示すことから、近年盛んに研究が行われている。一方、シクロフェナセン類をはじめとする、CPPのリング状構造を一段階拡張したベルト状化合物は、アームチェア型カーボンナノチューブのモデル化合物として、剛直な環状π共役系がもたらす物性に興味が持たれているが、その合成の困難さから長年未踏のターゲットとなっている。本研究では、CPP類を前駆体としたシクロフェナセンをはじめとするベルト状化合物の合成に取り組んでいる。この研究を通じてボトムアップ合成可能なカーボンナノベルトの世界を新たに拓き、構造化学および材料化学分野などにブレイクスルーをもたらすことを目指している。平成27年度は、ベルト化合物の前駆体となりうるCPP類縁体の合成について種々検討を行なった。これまでに得られた結果をふまえ、適した前駆体をさらに探索し、目的化合物の合成に向けて検討を進める。目的のベルト状化合物化合物が得られた際には、各種物性測定を行なうとともに、ベルト構造の伸長や多様な環サイズの合成などにも取り組む予定である。
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