研究課題/領域番号 |
15K17824
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
星本 陽一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30710074)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸・塩基錯体 / Frustrated Lewis Pair / カルベン / 水素活性化 / ホスフィンオキシド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、単離・保存可能なルイス酸・塩基錯体と高反応性分子会合状態の相互変換を利用して自在に制御し、有用性が乏しかったルイス酸・塩基錯体を高反応性分子会合状態の前駆体として活用する汎用性の高い手法を確立させることである。 平成27年度は、N-ヘテロ環状カルベンと有機ホウ素試薬から形成されるルイス酸・塩基錯体の合成に取り組んだ。その結果、空気中で安定に保存可能な新型ルイス酸・塩基錯体B-Poxを開発した。B-Poxを合成するために、活性部位周辺の空間を劇的に変化させることが可能なN-ヘテロ環状カルベンの合成が必要となったため、本研究にオリジナルなN-ヘテロ環状カルベンであるPoxImを開発した。PoxImは外部刺激に応答して側鎖に入れたホスフィンオキシド部位が回転し、反応活性部位周辺の体積を10-20%増減させることが可能であるとこを確認した。外部刺激を利用して、ここまで大きな骨格変化引き起こすN-ヘテロ環状カルベンはPoxImが初である。また、B-Poxから高反応性分子会合状態の誘起を自在に制御した。これは世界で初めて自在かつ正確にルイス酸・塩基錯体と高反応性分子会合状態の相互変換を達成したものである。更に、誘起した高反応性分子会合状態を利用して水素分子の不均一開裂を達成した。これらの結果は、典型元素のみで構成されるルイス酸・塩基錯体と高反応性分子会合状態を自在に操ることで従来金属を用いなければ困難であった分子変換反応を同様に達成出来ることを示したものであり、学術的に意義深い。また、新たな水素活用法にも繋がると期待でき、社会的意義も大きい。 以上の結果により、査読あり学術論文1報(論文表紙、海外WEBにおける紹介1件、国内商業誌による紹介1件)、学会における発表賞2件の業績を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は当初の計画としていた単離・保存可能なルイス酸・塩基錯体の設計・合成と、そこからの高反応性分子会合状態の誘起の自在制御を達成した。ルイス酸・塩基錯体の設計は当初の計画通りN-ヘテロ環状カルベンを母骨格とし、ルイス酸としては有機ホウ素試薬であるトリスペンタフルオロフェニルボランを用いた。この化合物の組合せにおいては当初計画した内容に対して満足いく進捗が得られたものの、より多様な化合物において本件でみられたような現象が起きるのかどうか、より一般的な議論に結びつける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、本研究結果をより一般的な現象として成立させられるかどうかを実験および理論計算をもちいて評価する。具体的には、異なる置換基を導入したPoxImを開発することでルイス塩基のバリエーションを拡大すること、および、多様な有機ホウ素化合物との錯形成を検討する。これにより、ルイス酸・塩基錯体のライブラリーを構築し、高反応性分子会合状態の誘起条件を系統的に調べることでより一般的なライブラリー構築を目指す。 更に、本研究により見出した高反応性分子会合状態の自在発生法を有機合成へと応用する。具体的には高反応性分子会合状態が水素と効率的に反応することを利用して、有機化合物の水添反応に応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高圧実験を比較的大きな規模で行うためのオートクレーブリアクターを購入予定であったが、平成27年度の研究は規模が小さい耐圧使用NMRチューブの使用でほとんどを遂行することが出来たため、必要経費が大きく節約できた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は実験スケールを大きくする必要があり、オートクレーブリアクターが複数必要になる。また、耐圧ガラス器具は消耗品であり、昨年度にまして購入および補充する必要がある。更に、平成27年度に得られた結果を論文として出版する際、可能な限りオープンアクセスにすることを計画しており、このために次年度使用額を充てる予定である。
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備考 |
(1)は海外WEBにおいて研究紹介記事が掲載されたもの。
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