研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、二環性骨格の2つの特徴を活かした新規化合物の創成、並びに新物性発現である。特徴の1つ目は“骨格変換”であり二環性骨格、その中でもビシクロ[2.2.2]オクタジエン(BCOD)の特異的な反応性に着目している。それを利用した共役拡張化合物の効率合成、得られた化合物を配位子とする、積層型希土類金属錯体の構築と物性解明を実施した。特徴の2つ目は“構造剛直性”であり、複数の二環性部位を適切な位置に配した連結型共役系によるナノ空間の形成、超分子化学相互作用に基づく曲面構造を有する無置換フラーレン類・カーボンナノチューブの構造識別を検討した。以下に今年度の成果を挙げる。 (1) 本研究実施前までは、ベンゾポルフィリンを配位子とする積層型金属錯体はモノベンゾ体のみであったが、縮環個数を2(異性体あり),3,4個と増やしたベンゾポルフィリン積層型希土類金属錯体の合成を達成した。また中程度であった収率も本年度の反応条件の検討によりすべて70%以上、良いものでは90%以上で得られるまでに向上することが出来た。得られた金属錯体の構造はX線結晶構造解析によって決定した。 (2) 連結部位に組み込んでいた二環性部位はこれまでBCOD骨格のみであったが、[2.2.1]型(ノルボルナジエン)を組み込んだ連結部位の構築に成功し、各種分光学測定、X線構造解析によって構造を明らかとした。その両端にさらなる共役構造の構築を検討した結果、フルオランテンを有したピンセット型分子の合成・構造決定を達成した。形成されるナノ空間によるπ曲面化合物の識別を検討し、今年度はC60,C70の包摂挙動解明を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の計画として、ベータ位のベンゼン環の縮環個数を1,2(異性体あり),3,4個とした一連のベンゾポルフィリンの積層型希土類金属錯体の構築を挙げていたが、非磁性錯体となるLa,磁性錯体となるTb錯体の合成手法の確立が出来た。得られた金属錯体については、元素分析、各種分光学測定、X線構造解析により目的化合物の合成を確認した。 また[2.2.1]型二環性骨格(ノルボルナジエン)を組み込んだ連結部位の構築、その両端に共役構造(フルオランテン)を有したピンセット型分子の合成・構造決定にも成功している。 それらの合成によって学会等に参加し、意見交換などを行った。初年度は合成法の確立、物性評価に向けての化合物合成を計画しており、順調に進んでいると考えている。
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