研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、二環性骨格の2つの特徴を活かした新規化合物の創成、並びに新物性発現である。 特徴の1つ目は”骨格変換”であり二環性骨格、その中でもビシクロ[2.2.2]オクタジエン(BCOD)の特異的な反応性に着目している。それを利用した共役拡張化合物の効率合成、その反応より得られた化合物を配位子とする、積層型希土類金属錯体の構築と物性解明を実施した。特徴の2つ目は”構造剛直性”であり、複数の二環性部位を適切な位置に配した連結型共役系によるナノ空間の形成、超分子化学相互作用に基づく曲面構造を有する無置換フラーレン類・カーボンナノチューブの構造識別を検討した。 1) ベンゾポルフィリンを配位子とした積層型金属錯体の構築では、ベンゾ縮環の個数を1から4個(2個のものは近接型、対面型異性体の両方)とした一連の三層型錯体の効率合成法を確立した。金属イオンとしては非磁性錯体となるLa(III)、磁性錯体となるTb(III)を用いた。条件検討の結果、全ての場合において三層型錯体が対応するBCOD縮環前駆体から65%以上、良い場合では90%以上の単離収率まで向上することに成功した。非磁性のLa(III)錯体では、溶液中での構造を1H NMRスペクトルで議論することが可能であり、室温、低温においても一、三層目のポルフィリンが金属フリーの場合と同様の対称性を保持していることを明らかとした。 2) 連結部位に組み込んでいた二環性部位はこれまでBCOD骨格のみであったが、[2.2.1]型(ノルボルナジエン)を組み込み、その両端にフルオランテンを有したピンセット型分子の合成・構造決定を達成した。形成されるナノ空間によるπ曲面化合物の識別を検討し、C60,C70の会合定数を算出した。またフルオランテン骨格の反応性に着目し、新規構造体の構築を検討したところ、二量体を形成した分光学データが得られた。
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