研究実績の概要 |
プロトン化/脱プロトン化によって立体構造や光学特性が大きく変化するスイッチ化合物創製を目指し、軸性キラルな 1,1’-ビナフチル骨格と 3,3’-ビピリジル骨格をスペーサーを介して環状に連結させた化合物を設計した。この骨格に適した置換基を導入すれば、プロトン化/脱プロトン化によってビピリジルの軸の立体反転およびキロプティカル信号の正負反転が達成しうる。 (1) 置換基を持たない (R)-1,1’-ビナフチルと 3,3’-ビピリジルが連結した環状化合物を合成した。X 線結晶構造解析の結果、3,3’-ビピリジルの軸は R に誘導されることが分かった。さらにいくつかの位置異性体や類似化合物を合成し、結晶構造解析を行ったところ、いずれの化合物も同様の不斉誘導が観測された。 (2) (R)-ビナフチルの 3,3’-位にメトキシ基またはホルミル基を持つ環状化合物を合成した。メトキシ基を持つ化合物のビピリジルの立体は無置換体と同様に R であった。しかしホルミル基置換体では S であり、置換基の種類によってビピリジルの立体構造が異なることが分かった。現在、プロトン化体の立体構造解析を進めている。 (3) 合成した環状化合物のプロトン化/脱プロトン化に伴うキロプティカル特性のスイッチング挙動を調査した。そのうちメトキシ基置換体ではプロトン化/脱プロトン化によって、旋光性の正負が反転するという興味深い知見が得られた。
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