研究課題/領域番号 |
15K17829
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
神戸 徹也 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00733495)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 典型金属 / デンドリマー / クラスター / 超原子 |
研究実績の概要 |
本研究課題では鋳型デンドリマーを利用した典型金属クラスター群の構築と超原子特性の発見を目標としている。今回申請者は、精密クラスター構築の基礎となるデンドリマー鋳型高分子へ精密集積可能な典型金属種のバリエーションを拡張した。具体的には電子勾配型鋳型デンドリマー(dendritic poly-phenylazomethines; DPAs)に対してBH3, AlCl3, BiCl3を用いることでホウ素、アルミニウム、ビスマス種の精密集積を新たに達成した。当研究室で既に精密集積を見出していたGaCl3, SnCl2を加えることで、13族から15族元素の典型金属種がクラスター構築に利用可能となった。DPA骨格で金属を配位するアゾメチン部位のモデル分子を用いて錯形成定数を算出することで、精密に配合できる組み合わせを探索し、AlCl3とBiCl3, AlCl3とSnCl2, GaCl2とSnCl2, およびGaCl3とBiCl3が精密な比率で配合できることを見出した。クラスター化については、Al、Ga、およびBiの単一クラスター構築をSTEMにより観察している。 また、本研究で開拓した典型金属種の精密集積はクラスター構築のみならず、様々な機能性デンドリマーの構築に繋がった。具体的にはBiCl3の集積による強度制御可能な一分子発光体の構築や、BH3集積による還元カプセルの構築である。還元カプセルは金属溶液に加えるだけで精密鋳型還元が可能であり、弱い配位力のためにこれまで鋳型還元が出来なかったAg等の精密クラスターの構築を新たに達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は典型金属種による画一クラスター群の構築と超原子特性の発現である。本研究目的に対して、申請者は新たにホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)の電子勾配型鋳型デンドリマーへの精密集積法を開拓した。さらに、Ga, Sn, Bi塩の錯形成定数を測定し、それらを基にした複数の典型金属を用いた精密混合集積を達成した。 こうした結果は、超原子構築に利用可能な典型金属群のバリエーションを構築を意味しており、(2)おおむね順調に進展していると言える。 さらにこの研究において新たに達成したホウ素の集積により、還元カプセルが構築できることを新たに見出した。こうした成果も含めて学会で報告しており、さらなる研究の進展が望める。
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今後の研究の推進方策 |
申請者が新たに達成した典型金属種の精密集積を利用し、原子数を規定したクラスター構築を行う。まずは構造に煩雑さの少ない単一金属クラスターから取り組む。単一金属クラスターの合成を確立したのち、他元素のドープによる価電子の制御を行い、超原子特性の発現を狙う。 還元には元素種の電位を考慮して種々検討する。申請者は予備的に典型金属クラスターの構築に取り組んでおり、Al, Biのクラスターの合成を見出している。クラスターの同定にはSTEMによる構造観察、マススペクトルによる質量分析、EXAFSによる結合状態解明、X線光電子分光(XPS)による電荷状態解明を軸に行う。Al, Ga, Biにおいて特異安定性を示す超原子構築を狙い、超原子群の構築に向けて新たな知見を集めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
精密集積可能な典型金属種の探索において条件検討を行ったところ、当初の計画よりスムーズに研究が進展したため、予定していた試薬、器具の購入分を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
超原子構築における測定、合成環境作りに利用する。特に、測定では高分解能STEMによる微細解析に重点を置くため、そのための機器使用料、消耗品等に充てる。またクラスター構築に伴うグローブボックス等の環境作り、また金属種の使用に充て、研究を進める予定である。
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