本研究では、104番元素ラザホージウム(Rf)について、有機配位子との錯形成挙動を溶媒抽出法により調べることを目的としている。Rfは人工放射性元素であり、その合成可能量が極端に少ないこと、半減期が非常に短いことから、実験的制約が非常に厳しく、化学的性質はあまり明らかとなっていない。Rfの化学研究を行うに際し、同族元素であるジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)を利用して、模擬実験により適切な実験条件の検討を行っておくことが重要である。H27年度では2-テノイルトリフルオロアセトン(HTTA)およびジ-2-エチルヘキシルリン酸(HDEHP)を利用したZr、Hfの溶媒抽出における抽出機構を明らかにした。H28年度には上記の抽出剤を用い、フローインジェクション分析法を利用した迅速溶媒抽出装置を用いたZr、Hfの溶媒抽出実験を行ったが、抽出速度に問題があり、Rf実験に向けてさらなる抽出の迅速化が必要であった。H29年度では、新たに抽出剤としてHTTAと似た構造を持つ2-フロイルトリフルオロアセトン(HFTA)を採用し、バッチ法によりZr、Hfに対する抽出平衡到達時間および抽出機構の調査を行った。その結果、HFTAを用いた抽出では平衡到達まで数分程度と、HTTAと比較して大幅に抽出速度が速く、また抽出機構もHTTAと同様にZrやHfと4分子のHFTAが反応して生成した錯体が抽出されていることが示唆された。さらに、迅速溶媒抽出装置を用いてZr、HfのHFTA抽出を行ったところ、抽出温度を45℃まで加熱することにより平衡到達まで30秒程度と大幅に加速することができた。これは半減期が1 min程度であるRf-261に適用可能であることを示しており、HFTAを用いてRfと有機配位子との錯形成挙動の調査が可能であることが示された。
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