研究課題
本年度は、「新規結晶構造を有する金属ナノ粒子の開発」として純金属の結晶構造制御に取り組んだ。具体的には、通常はfcc構造を有するRhにおけるhcp構造の作製を試みた。金属前駆体の選択、保護剤の選択、電子状態の制御という3つの観点から検討を行ったが、未だ純粋なhcp構造を有するRhナノ粒子の作製には成功していない。しかしながら、検討を行っていく中でバルクでは存在しないRh炭化物の創製に成功した。貴金属の多くは軽元素である炭素や窒素と化合物を形成することはほとんどなく、発見した方法によりその他の貴金属においても同様に炭化物を創製できる可能性を見出した。更に面白いことに、作製した新規のRh炭化物は格子間に炭素原子を有するものの、そのRh原子の配列はfcc構造を基にしたものではなく、hcp構造様の配置をとっていることが、放射光XRDパターンのリートベルト構造解析、高分解能STEM観察から明らかとなった。また、固溶体合金の結晶構造制御も並行して取り組んだ。今年度はPt-Ru系の結晶構造制御を検討した。この合金系はバルクではPtが豊富な金属組成ではfcc構造、Ruが豊富な金属組成ではhcp構造を形成する。この合金系は燃料電池の電極反応をはじめとする種々の化学反応において高い活性を示すため、広く研究が行われているが、その結晶構造を制御した例はほかにない。本年度は作製方法を検討することでRuが豊富な金属組成において純粋なfcc構造の作製に成功した。さらに、「新規fcc-Ruナノ粒子の構造形成メカニズムの解明」として、XAFS実験計画を立案し、次年度の放射光実験を計画した。
1: 当初の計画以上に進展している
上記に記したように、「新規fcc-Ruナノ粒子の構造形成メカニズムの解明」および「新規結晶構造を有する金属ナノ粒子の開発」共に研究が進展している。また、固溶体合金の系に関しては計画を前倒しし、本年度から検討を始めた。さらに、当初予期しいなかった、新規Rh炭化物の発見というセレンディピティ―も生まれた。
「新規結晶構造を有する金属ナノ粒子の開発」としては引き続き単金属および固溶体合金を並行して進めていく。また新規Rh炭化物に関する研究も引き続き行っていく。「新規fcc-Ruナノ粒子の構造形成メカニズムの解明」に関しては、エネルギー領域の異なる放射光施設を用いたXAFS実験を行い、形成メカニズムの解明を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 産業財産権 (9件) (うち外国 3件)
Advanced Materials
巻: 28 ページ: 1129-1142
10.1002/adma.201502881
Accounts of Chemical Research
巻: 48 ページ: 1551-1559
10.1021/ar500413e
Chemical Communications
巻: 51 ページ: 10169-10172
10.1039/C5CC04663G
ChemCatChem
巻: 7 ページ: 3887-3894
10.1002/cctc.201500758