研究課題/領域番号 |
15K17835
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
副島 哲朗 近畿大学, 理工学部, 講師 (40512695)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マンガン酸化物 / 無機ナノ粒子 / 複合体 / アモルファス |
研究実績の概要 |
当研究室が開発したアモルファスマンガン酸化物ナノ粒子の合成法を起点として,コバルトや亜鉛とマンガンの複合酸化物を合成した。得られた材料について,X線回折,X線光電子分光,透過型電子顕微鏡観察,エネルギー分散形X線分析装置にて分析を行った結果,CoMn2O4やZnMn2O4などの各種機能性材料が得られたことがわかった。また,同様にしてアモルファスマンガン酸化物ナノ粒子の合成法を,他の無機化合物共存下で行ったところ,TiO2-MnO2や,ZrO2-MnO2などの無機複合体ナノ粒子の合成に成功した。 これらの材料について,酸性溶液中におけるローダミンB色素の分解に関する触媒活性評価を行った。その結果,MnO2単独のナノ粒子と比較して,CoMn2O4やZnMn2O4などのマンガン-異種金属複合酸化物はいずれも異常に高いローダミンBの分解速度を示すことを見い出した。さらに興味深いことに,キセノンランプの光を照射して同様の実験を行ったところ,その分解速度がさらに増大することを発見した。この光照射に伴う分解速度の向上は,TiO2-MnO2などにも見られた。 また,これらの研究と同時に,MnO2と複合化させる目的でAuナノ粒子を合成していたところ,Si基板上に有機アンモニウム塩膜を形成させて水酸化金水溶液に浸漬させて光照射を行うことで,樹木状金ナノ結晶が基板上に成長することを見い出した。非常に興味深いことに,この金ナノ結晶はSi基板にあらかじめ傷をつけておくと,その傷を付けた箇所から優先的に成長することを発見し,その形成メカニズムがガルバニック置換反応と金錯体の光還元成長であると結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はかなり数のマンガン-異種金属複合酸化物を合成するはずであったが,年度によって再現性が取れないという事が起き,現在は再現性の確立を主目的として合成研究を行っている。特に,初年度では合成が確認されていたマンガン-異種金属複合酸化物が合成できない事が発生しており,合成手順の見直しも含め,原料の試薬メーカー,反応容器などについても検討し,合成法としての確立を急いでいる。 一方,触媒活性評価という観点からは,本合成法で得られた材料が興味深い触媒活性と思われる挙動を示している。また,別の観点から金ナノ結晶の独特の合成法に成功しており,当初の目的のひとつとしていた新規触媒材料の開発という立場では,この材料も非常に興味深い対象であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
①:合成法の確立については,試薬メーカーを含めて基本的な洗い出しを行う。その後に,様々な金属塩とマンガンを含む複合酸化物群を合成する。 ②:マンガン酸化物と種々の無機化合物の複合体の合成を行う。これまでの成果から,一部の無機化合物についてはアモルファスマンガン酸化物がシェルを形成するように析出することがわかっている。そこで,前駆体の過マンガン酸カリウム濃度を変化させて,アモルファスマンガン酸化物の被覆率が異なる複合体の合成を試みる。 ③:①と②の手法を組み合わせて,より高次のマンガンをベースとする各種複合体の合成を試みる。 ④:上記のマンガン酸化物ナノ材料群を用いて,溶液系における有機化合物の酸化反応に関する熱触媒活性を評価する。また,興味深いことに,色素の酸化分解については光照射下で分解速度が増大することがわかっている。この反応性のメカニズムについて明らかにしたい。それと同時に,各種マンガン酸化物の酸素還元/発生反応に関する触媒活性を評価することを試みる。 ⑤:研究者の所属機関にラマン分光測定装置が納入された場合,偶然に得られた樹木状金ナノ結晶について,表面増強ラマン散乱の基板についての機能を評価したい。また,その還元反応に関する触媒活性を評価したい。一方,Cuナノワイヤーの成長も偶然に見い出しているので,この形成メカニズムについても明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請書どおりに回転電極装置一式を購入した。試薬等の購入について十分であり,ごく僅かな残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
思いがけず光照射下での特異な反応性が見出されたことから,電極触媒とあわせて,光照射装置等の購入あるいは光触媒反応に関する試薬の購入などを計画している。
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