研究課題/領域番号 |
15K17837
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
辻本 吉廣 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能材料研究拠点, 主任研究員 (50584075)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 層状化合物 / 複合アニオン化合物 / 酸化物 / ハロゲン / 低次元磁性 |
研究実績の概要 |
本研究はアニオンの複合化によって新しい配位状態を創り,単一アニオン化合物には見られない機能の発現と探索を目的としている.筆者は過去にハロゲン原子の導入によって高原子価Ni3+が平面ピラミッドを形成した2種類の層状酸ハロゲン化物Sr2NiO3X (X = F, Cl)の合成に成功し,ハロゲン原子の種類によって磁気基底状態が変化することを観測している.以上の背景から,本研究ではハロゲン原子と磁性との関係を系統的に理解するために,NiをMnで置換したSr2MnO3Fの合成を行なった.構造解析の結果,類似の酸ハロゲン化物と異なり,Mn原子はJahn-Teller効果によって歪んだ八面体を有していることが明らかになった.さらに,磁気測定の結果,反強磁性秩序が133 Kで生じ,正方ピラミッド配位をとるSr2MnO3Clの磁気秩序温度 (80 K) より高いこともわかった.酸フッ化物の場合,Mn原子とO原子が同一平面上にあることから,超交換相互作用が酸塩化物のそれよりも大きくなり,結果秩序温度の大幅な上昇を生じたと考えられる. 本年度ではさらにZnが平面4配位構造をもつ複合アニオン化合物の合成に成功した.一般的にZn化合物は四面体,八面体を選択的に形成するため,平面4配位の例は非常に限られている,つまり必然的にその機能物性についてはまったく明らかになっていない.来年度では構造,光学・電気特性を詳細に調べ,従来のZn化合物との相違点を明らかにする予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究実績に記載した物質の他に幾つかの全く新しい化合物の合成に成功していることから,当初予期していた以上の成果が得られ概ね順調に研究が進んでいる.ただし,大型施設を使った実験による物性評価も必要となっているため,共同研究を通して研究を加速していく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り研究を進めていくが,新しい物質が見つかると同時に異なる様々な物性も観測されるため,まずは初年度で発見した化合物を中心にキャラクタライズを行い,余力があればさらに研究を発展させていくことにする.また研究成果を効率的に上げていくために内外の共同研究者と密接に研究を進めて行く.
|