研究課題/領域番号 |
15K17838
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小森 有希子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員 (50726370)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フランシウム / アルカリ金属 / 溶媒抽出 / クラウンエーテル |
研究実績の概要 |
本研究では,最も重いアルカリ金属元素で,かつ天然に存在する元素の中では2番目に存在量の少ない放射性元素であるフランシウム(Fr)を対象とし,その溶液中における錯形成反応を明らかにすることを最終的な目的としている.そのために,加速器を用いた重イオン核融合反応により比較的半減期の長い同位体212Fr(半減期20分)を合成し,クラウンエーテルのような環状ポリエーテルを用いた溶媒抽出法によりFrの錯形成反応について調べる.本研究で用いる212Frは,理研重イオン加速器を用いて鉛(natPb)標的にホウ素(11B)ビームを照射することにより製造する予定である.この核反応による212Fr生成の励起関数,反応断面積の実験値は報告されていないため,計算コードを用いて核反応が起こる入射粒子エネルギーや標的から反跳した212Frのヘリウムガス中での飛程,標的厚みを見積った.これに基づき,本年度はnatPb(11B,xn)反応により212Frを製造するための専用ガスジェットチェンバーを設計,一部を製作した.これを加速器のビームラインに取り付けることにより,Pb標的から反跳したFr原子を塩化カリウム(KCl)のエアロゾルに付着させ,ヘリウムのガス気流に乗って照射室から化学実験室に数秒で搬送し,溶媒抽出実験に用いることができる.また,ガスジェットチェンバー内に標的を複数枚設置することにより,Frと軽い同族元素の放射性同位体(RI)を同時に製造することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で用いるFrの同位体212Frは,加速器を用いた重イオン核融合反応によって製造されるが,本年度はFrを製造するための理研AVFサイクロトロンを用いたマシンタイムを取得することができなかったため,natPb(11B,xn)反応による212Frの生成断面積の測定や,212Fr同位体を用いた溶媒抽出挙動の研究が全体的に遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度設計・製作したFr製造用チェンバーを用い,natPb(11B,xn)反応による212Frの合成を行う.この核反応の励起関数を測定し,ビームエネルギーやガスジェットガス流量などの製造および搬送条件を最適化する.研究に用いる各クラウンエーテルは入手済みであり,まずはFrの軽い同族元素であるCsの長寿命RIトレーサーを用いて抽出条件を検討する.水相には対アニオンとして硝酸イオンを含む水溶液を用い,有機相にはクラウンエーテル/1,2-DCEの溶液を用いる予定である.硝酸イオン濃度や抽出剤濃度を系統的に変化させて分配比を調べ,抽出化学種やその安定性についての基礎データを取得した後,Frの溶媒抽出実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
Frを製造するための専用ガスジェットチェンバーの製作に遅れが生じたため,鉛標的ならびにガスジェットチェンバー内に標的を複数枚設置するためのマルチターゲットホルダの発注を次年度に繰り越した.そのため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
鉛標的およびマルチターゲットホルダを平成28年度に早急に発注し,ガスジェットチェンバーを完成させる予定である.
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