研究実績の概要 |
本年度は,212Frを製造するための専用のガスジェットチェンバーを製作した.一部の部品は前年度に製作済であったが,今回チェンバー内にターゲットを4枚設置できるマルチターゲットホルダなどの部品を新たに製作した.これにより,natPb(11B,xn)反応で生成する212Frの他に, natGe(11B,xn)79RbおよびnatSn(11B,xn)125Csなどの核反応により軽い同族元素を同時に製造し,化学実験室にガスジェット搬送して溶媒抽出実験に供することができる. また,natPb(11B,xn)212Fr反応の他に,濃縮同位体の206, 207, 208Pbを用いた場合の212Frの生成断面積を計算し,それぞれの核反応の励起関数測定に要するターゲットの枚数や鉛の厚さ,入射ビームエネルギーを評価した.また,Frとの錯形成反応を調べるための抽出剤として,環のサイズと置換基の異なる18-クラウン-6,21-クラウン-7,24-クラウン-8,ジベンゾ-18-クラウン-6,ジベンゾ-21-クラウン-7,ジベンゾ-24-クラウン-8の6種類のクラウンエーテルを用意し,137Csトレーサーを用いて硝酸ナトリウム水溶液から1,2-ジクロロエタンへの溶媒抽出挙動(分配比の振盪時間依存性や抽出剤濃度依存性、硝酸ナトリウム濃度依存性)を調べた.Cs+イオンは21-クラウン-7を用いた場合に最も分配比が高くなることが分かった.また,ベンゼン環の置換基をもつクラウンエーテルは,置換基をもたないクラウンエーテルに比べ分配比が小さくなった.同様のデータをRb, K, Naについても取得する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度のビームタイムでは、まずnatPb(11B,xn)212Fr反応および206,207,208Pb(11B,xn)212Fr反応の励起関数測定を行い,得られた生成断面積の値を理論計算コードの計算値と比較する.生成反応断面積が最大となるビームエネルギーを決定し,212Frの溶媒抽出実験を行う.Cs+は21-クラウン-7で良く抽出されたことから,Fr+も21-クラウン-7または24-クラウン-8で抽出されやすいと考えられるため,これらのクラウンエーテルを中心に抽出速度や分配比の抽出剤濃度依存性などのデータを取得する.得られた値を他の軽いアルカリ金属のものと比較し,Frの抽出化学種やイオン半径と分配比との相関について考察する.
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