研究実績の概要 |
平成29年度は,理研AVFサイクロトロンを用いて鉛の濃縮同位体(206Pb, 207Pb, 208Pb)にホウ素(11B)を照射し、212Frを製造する核反応の励起関数を初めて測定した。その結果、212Frの生成断面積が最大となるのは206Pb(11B,5n)212Fr反応で、入射粒子エネルギー73.6 MeV付近で約460 mbであることがわかった。 次に、206Pb(11B,5n)212Fr反応で製造した212FrをHe/KClガスジェット法で化学実験室に搬送し、クラウンエーテルを用いた212Frの溶媒抽出実験を行った。水相には1 M硝酸、有機相には環のサイズや置換其の異なる7種類のクラウンエーテル(18-クラウン-6、21-クラウン-7、24-クラウン-8、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-21-クラウン-7、ジベンゾ-24-クラウン-8、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6)のニトロベンゼン溶液を用いた。まず、Frとクラウンエーテルの錯形成ならびに抽出反応の速さを調べるために、抽出時間を変化させてFrの分配比(D)を測定した。その結果、Frの錯形成ならびに抽出反応は30秒以内という短い時間で平衡状態に到達することがわかった。次に、抽出時間を3分に固定し、クラウンエーテルの濃度を変化させて分配比を測定した。NaやK、CsのRIトレーサーを用いて同様の溶媒抽出を行い、Frのデータと比較した。
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