研究実績の概要 |
本研究では、担持合金ナノ粒子触媒特性の発現機構を原子レベルで明らかにすることを目的としている。担持触媒の触媒特性は、多くの場合、触媒担体との相互作用に著しく依存することが知られており、Strong Metal-Support Interaction(SMSI)効果と言われている。このため、担持触媒を精密に制御するには、原子レベルで構造が明らかな触媒担体を用いることが重要であると考え、本研究では、TiO2単結晶を担体として用いた。 昨年度は、当初、担体として予定していた還元されたTiO2(110)-1x2表面構造について、新しい構造モデルが理論計算から提案された(Wang Q., Oganov A.R., Zhu Q., Zhou X.F., Phys. Rev. Lett. 113 (2014) 266101.)ため、その構造を既存の構造モデルと共に実験的に検証した。具体的には、反射高速陽電子回折法を用いることで、0.1 Åの精度で構造を決定した(I. Mochizuki, H. Ariga, Y. Fukaya, K. Wada, M. Maekawa, A. Kawasuso, T. Shidara, K. Asakura and T. Hyodo, Phys. Chem. Chem. Phys. 18 (2016)7085.)。 本年度は、更に、TiO2内に不純物として存在する水素のエネルギー準位が、金属との相互作用に大きく寄与するバンドギャップ内部に存在することが、その構造と共に報告された(K. Shimomura, R. Kadono, A. Koda, K. Nishiyama, and M. Mihara, Phys. Rev. B 92 (2015) 075203(1-6).)ことから、還元されたTiO2で水素の状態をミュオンスピン回転/緩和法を用いて明らかとした。その結果、還元されたTiO2では水素は酸素欠陥内に2個安定化し、そのエネルギー準位は還元されていないものと比べ、band gap内のよりエネルギーの低いところに位置することが示唆された。本研究で見出した、還元されたTiO2の構造は、これまでに報告されていない。
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