研究実績の概要 |
紫外光照射により着色し、数マイクロ秒から数百ミリ秒で完全消色する架橋型イミダゾール二量体の高速フォトクロミズムは、ホログラム材料や蛍光スイッチ材料など、様々な分野で応用が期待されている。本研究課題では、長波長の光を短波長に変換するアップコンバージョン技術を用いることにより、可視領域の安価な連続光源で高速フォトクロミズムを示す材料を創出し、さらに励起光強度によってフォトクロミズム特性が変わる材料を創出することを目的としている。 平成29年度は、青山学院大学から立命館大学に異動したこともあり、これまでの反応系の更なる拡張と、新しい化合物、反応系の探索を行った。これまでに開発したビラジカル-キノイド互変異性過程を活用した高速フォトクロミズムでは(J. Am. Chem. Soc., 2015, 137(17), 5674-5677.)、弱い紫外LED光で励起した際は一光子反応が進行してビラジカルの生成により青緑色になり、数十ミリ秒以内に消色するフォトクロミズムを示す一方、励起光強度を強くすると深青色のキノイド構造になる非線形フォトクロミック反応を報告している。これまでは二つのフォトクロミック化合物を連結した化合物系について検討してきた一方、今年度はフォトクロミック化合物と逆フォトクロミック化合物とを連結した新しい非線形フォトクロミック化合物の開発に成功した(J. Am. Chem. Soc., 2018, 140(3), 1091-1097.)。逆フォトクロミック化合物を組み合わせることにより、可視光で非線形的にフォトクロミック反応を誘起でき、可視光非線形フォトクロミック材料開発の重要な知見を得た。新しい化合物系としては、申請書に記載してきたコロイド無機ナノ結晶と有機化合物を組み合わせた反応系や有機ナノ構造体を用いた光化学反応系の探索を行ってきた。
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