研究課題/領域番号 |
15K17851
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤川 賢吾 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60548733)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペプチド触媒 / ライブラリスクリーニング / コンビナトリアル化学 / 不斉マイケル付加 |
研究実績の概要 |
ペプチド触媒は構成アミノ酸の種類と組み合わせに限りがないため,高い可能性をもつ反面,最適配列を見出すのが難しいという問題がある。本研究ではコンビナトリアル化学的手法で構築したペプチドライブラリの中から高活性な触媒をスクリーニングするための簡便な手法を開発し,これを用いた新たなペプチド触媒の創製を目的とした。 まず,N末端にプロリル基をもつペプチドをアミン型の有機触媒として用いる反応において,色素ラベル化した反応剤を触媒活性に応じてペプチドに導入するスクリーニング手法を確立した。各反応ステップの速度論的解析を行い,この方法が律速段階を促進するペプチドを可視化するものであることを確認した。本スクリーニング法では,反応系中で還元的アミノ化を行って生成物のカルボニル基をアミン触媒に結合させるため,ペプチドライブラリにあらかじめレポーター分子や基質等を導入しておく必要がない。樹脂ビーズ上に構築した未修飾のペプチドライブラリ全体の評価を迅速に行うことができ,容易に大規模なスクリーニングに適用可能である。 次に,数万種類のペプチドからなるライブラリを調製してスクリーニングを行い,新たな骨格をもつペプチド触媒を探索した。構成要素のアミノ酸を変えた二種類のライブラリから,共通骨格をもつペプチド群をそれぞれ見い出した。二つのペプチド群はN末端の数残基が同じであるにも関わらず,不斉マイケル付加反応において互いに相補的なエナンチオ選択性を示した。さらに,共通骨格をもとに第二世代のライブラリを構築してスクリーニングを行い,より優れた反応性・選択性を示すペプチド触媒を得た。このように,ペプチドライブラリを用いた骨格探索とさらなるチューニングを段階的に行うことで,効率的に高活性・高選択的触媒が開発できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,新たなスクリーニング手法の確立と速度論的解析による妥当性の検証を行い,またこれを大規模ライブラリに適用して新たな骨格をもつペプチド触媒の創製に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで,有機溶媒中で本スクリーニング法を用いていたが,含水溶媒中の反応にも適用可能であることが明らかになった。水中ではペプチドの構造や官能基のはたらきが有機溶媒中とは異なると考えられ,また疎水性反応場の構築によってより効率的な反応が期待できる。今後,含水溶媒中でのスクリーニングを行い,さらに高活性なペプチド触媒を創製する。この際,官能基をもつ種々のアミノ酸を組み込むことでライブラリの規模を大きくし,数百万種類のペプチドのスクリーニングを行う。また,本スクリーニング法の適用範囲の検討,スクリーニング法を利用した新たな反応開発,得られたペプチドの機能と構造の解析を行う予定である。
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