パラジウム触媒直接的アリール化重合 (DArP) において、ドーマント・アクティブ可逆平衡を誘起し、ホモカップリング欠陥の生成を効果的に抑制する混合配位子触媒の開発を行った。その結果、P(2-MeOC6H4)3 (L1) にテトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) を共配位子として組み合わせることにより、ホモカップリングに加え、クロスリンク、重合停止などの副反応を極めて効果的に抑制できることを見出した。さらに、これらの副反応がC-X結合からC-H結合への還元をトリガーとして起こり、TMEDAがこの還元を効果的に抑制することを明らかにした。一方、配位子としてTMEDAのみを用いると全く重合が進行しなかったことから、重合の進行にはL1の使用が必須であることが分かった。すなわち、混合配位子触媒を用いたDArPにおいては、配位子L1が反応を促進し (アクティブ種の形成)、TMEDAが副反応を抑制する (ドーマント種の形成) ことで、高度に構造制御されたポリマーの合成を可能にすることが分かった。 さらに、混合配位子触媒は様々なモノマーのDArPに適用可能であることを明らかにした。例えば、これまで右田-Stilleカップリング重合により合成されて優れた性能を示すことが知られているものの、DArPでは主鎖構造の制御が困難であるようなπ共役系高分子の合成にも適用可能であることを明らかにした。本触媒を用いることにより高分子量かつ構造欠陥が少ない (通常1%以下) ポリマーが得られた。また、得られたポリマーは右田-Stilleカップリング重合によるポリマーと遜色のない物性値を示した。
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