研究課題/領域番号 |
15K17860
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
河村 伸太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (60732956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トリフルオロメチル化 / 超原子価ヨウ素 |
研究実績の概要 |
トリフルオロメチル化合物は、医薬品や農薬の多くに見られる。トリフルオロメチル基を炭素骨格に導入することで基の有機分子の代謝安定性、脂溶性を向上させることができるためである。近年、オレフィン類の二官能基化を伴うトリフルオロメチル化反応の開発が我々を含む多くの研究グループによって盛んに研究されおり、数多くの反応例が報告されている。しかし、その不斉化に成功した例は未だほとんど知られておらず、基質にも制限がある。医薬品や農薬は光学活性物質であることが多く、立体化学の制御を伴う同手法の開発は極めて重要である。最近、我々は超原子価ヨウ素試薬 (Togni試薬) を用いる求電子的トリフルオロメチル化反応の開発およびその機構解明に成功した。同機構研究では、超原子価ヨウ素試薬を遷移金属触媒がルイス酸的に活性化し、超原子価ヨウ素を活性中心として反応が進行していることが示唆された。そこで、申請者は得られた知見を基にキラル有機ヨウ素化合物を触媒として活用することで、立体化学の制御を伴うオレフィンの二官能基化型トリフルオロメチル化反応が可能になると考えた。超原子価ヨウ素試薬を用いるトリフルオロメチル化反応は盛んに研究されている一方で、これを触媒として用いた反応は知られていない。そこで、初年度は超原子価ヨウ素試薬の触媒化に取り組むことにした。本触媒系では、①トリフルオロメチル化、②ヨウ素の酸化、③配位子交換の素反応課程が必要とされる。本年度は特に、②のヨウ素の酸化剤について検討を行った。その結果、mCPBAやoxoneに変わる有効な酸化剤が見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機ヨウ素触媒を用いるトリフルオロメチル化反応に有効であると考えられる酸化剤を見つけることに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で見つかった酸化剤を用いて、種々の有機ヨウ素化合物の反応性を検討する。超原子価ヨウ素中間体とオレフィンとの反応では触媒の電子的な性質が大きく影響することが予想されるため、電子供与性基および電子吸引性基を芳香族ヨウ素化合物に導入して反応性を検討する。加えて、溶媒や反応温度などの詳細な反応条件の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は酸化剤の検討を行ったが比較的、安価な試薬のみで検討を行った。今後は光学活性な有機ヨウ素化合物を取り扱うことになるが、同化合物を含む光学活性化合物は一般的に高価であり新規触媒を設計するにも費用がかかる。このため一部費用を繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
光学活性化合物の購入費用として使用する。
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